山形大学農学部
 

生物環境学科

Department of Bioenvironment
人類生存の基礎である衣・食・住の資材を、人々の生活する身近な地域の自然から獲得することが、人類史の基本原理でした。こうした人間と自然との物質代謝を通じて、地球上には多様な民族文化が花開いてきました。しかし、とくに20世紀後半以降の農産物市場の国際化と大量生産・大量消費の拡大は、その物質代謝を撹乱し、世界的な資源問題を引き起こしました。また、1980年代に入ると大量廃棄─とくに人工資材─の拡大と大規模開発の進行によって、生態系の破壊をはじめ地球的規模での環境問題が顕在化しつつあります。こうした時代的状況のもとで、本学科は、地域環境科学、森林環境資源学の2講座で構成され、水・土・緑の諸資源の科学的分析を基礎に、その総合的な資源管理のあり方と地域の環境保全について研究しています。

地域環境科学講座

のぞましい環境保全システムの解明と実現には、学問の各分野におけるアプローチと分野間の共同とともに、農林業のもつ役割・意義をより大きくとらえる必要があります。本講座は、これまで水系を中心に展開してきた生産・生活・文化を地域環境としてとらえ、現実の諸問題を解決しつつ、地域環境のあるべき方向を追求することを課題としています。具体的には、地域計画、河川環境、地域生態の分野を中心に、地理学的内容を加えてこれらの課題に迫る教育・研究に取り組んでいます。生産・生活・文化を地域環境の大きな構成要素として、農林業・農山村をより広くとらえ、現実に生起する問題点を明らかにしつつ、人間と自然との共存という地球環境のあるべき展開方向を追究しています。
地域計画学分野

農山村を対象として地域問題の解明と解決を目標に、農村文化の伝承、まちづくり・むらづくり、集落の合意形成方法、農産物と堆肥を核とした地域資源循環システム、食育・食農教育、地産地消、都市農村交流など農山村の問題について、人文科学アプローチと社会科学アプローチで実証的に取り組んでいます。

ゼミ風景。地域とかかわるための基礎知識をみんなで勉強しています。
環境地理学分野

農山村や都市を対象に、人文地理学の視点から、まちづくり、歴史的・伝統的景観の保全、地域活性化、自動車交通と環境などの諸問題について、フィールドワークを中心とした現場主義の立場で取り組んでいます。

ゼミ風景。新聞記事から地域・環境問題を紹介して議論しています。
河川環境学分野

川や農業用水(排水)は流域の生活や歴史そして文化と深くかかわっています。同時に水辺や流水は生物にとっての生活の場でもあります。本分野では、農業土木や河川工学を中心として、生態系への人的インパクトの緩和、人と生物とが共生できる水利施設などの改良・川造りなどの技術開発をめざして、山形の美しい農地や渓流をフィールドに、生物の生息状況や物理・化学的環境の調査、農業水利系の調査を行い、理論的検討や試験・実験などによって諸現象の解明に取り組んでいます。

(左)斜曲面魚道見学(最上川と立谷沢川の合流部)
(右)遡上と魚道内の阻害要因(魚の遡上しやすい魚道の調査)
地域生態学分野

ブナ林や里山を中心とした自然環境でフィールドワークを中心とした調査研究を行っています。人類は自然生態系について、ごくわずかしか解明していません。このため、賢く利用できずに環境劣化や生物の絶滅を招いています。地域生態分野では、生物の環境適応や相互作用に関する謎を基礎研究で解き明かし、これを地域の自然環境の復元や保全、有効利用に応用する方法を提案しています。

(左)ブナ林での植生調査の様子
(右)調査を終えての集合写真
農地環境工学分野

農村地域は食糧および食料の生産を重視しつつも環境に配慮した豊かでアメニティの高い地域の形成が求められています。また、乾燥地や開発地域など世界の農地環境問題の早急な解決も希求されています。こうした世界規模の社会的要請に応えるため、農地1枚の構造整備と管理のあり方などミクロな問題から、農地が地球環境におよぼす影響評価などマクロな問題まで、農地を取り巻くあらゆる事象が研究の対象です。主要なテーマは、農地環境機能の解明と豊かな農地生態系の構築をめざす「農地環境機能の向上」、宇宙から地球をモニタリングし地域環境を解析する「GIS・R/S手法」の応用、水質浄化機能の強化や乾燥地における土壌劣化防止のための「農地における水・物質循環」の解明とその改善方法の開発です。

(左)GIS・R/S手法による土地被覆分類例
(右)水田の土壌断面調査
流域保全学分野

雪国の里山の荒廃した森林生態系の修復や持続可能な森林管理など森林流域の保全に関する技術の総合化を目標に、積雪環境と森林の相互関係、庄内地域の伝統的な焼畑林業と育林放牧を組み合わせたアグロフォレストリー、利雪・親雪、森林環境教育などの課題について、演習林におけるフィールドワークを中心に実践的に取り組んでいます。本分野はやまがたフィールド科学センター流域保全部門の教員が担当しています。

(左)雪国に暮らす人々の森林への積極的な働きかけによって生じたブナの「あがりこ」の観察
(右)積雪期のブナ二次林の踏査。背景は月山。

森林環境資源学講座

森林環境資源学講座では森林の生み出す様々な資源を有効に活用しつつ、その環境機能を最大限に発揮で きるような森林の保全管理のあり方と技術に関する教育研究を行っています。具体的には、森林を構成する生物やその動態の生態的解明を基礎とした育成技術の 確立、森林と立地環境との相互作用の解明とその応用、森林から生み出される様々な資源の高度利用の開発、森林・林業・山村をめぐる歴史と現状の経済・政 策・文化の視点からの分析と提言、森林から得られる情報の収集と解析を保全・管理計画に反映させる技術の確立などを機軸に、森林・林業を取り巻く様々な問 題について多面的・総合的に取り組んでいます。同時に自然環境に恵まれた庄内地方の特徴を活かすため、山岳林から奥地林、里山、河海岸まで多様なフィール ドでの調査や資料の収集を重要視した教育を行っています。
卒業後は、大学院への進学や専門を活かした技術職・研究職あるいは教育職を含む公務員への就職など広範囲にわたります。
森林生態管理学分野

農学部のある庄内地方は日本海側特有の気候から特徴的な森林が多く成立しています。冬季の季節風が吹きつける海岸砂丘上にはクロマツ林が造成されており、風背地にはタブノキ照葉樹林が点在しています。里山から山岳地域は豪雪地帯で、ブナを中心とする落葉広葉樹林が成立していて、スギ人工林も広い面積を占めています。このような特色ある立地環境とそこに成立する森林の構造や動態との関係や、それぞれの樹木の種特性と森林群集の他の生物との相互関係を明らかにし、これらを基礎とした森林の育成方法を創出することをめざしています。

(左)コナラ二次林での調査
(右)演習林での森林生態学実験実習
森林資源利用学分野

人間にとって森林は資源と環境の宝庫です。森林の植物や微生物が環境に果たす役割の解明(植物と植物の相互作用)、人間生活と深く関わる資源(樹木やキノコ)の高度で有効な利用、環境に優しいリサイクル型の資源利用(木質廃棄物の再利用)が、今、重要になってきています。ここ庄内は東北の日本海側に位置し、森と雪に恵まれ、質量ともに豊かな生物層が存在しています。これらを対象としてミクロな視点(化学的視点)から森林を理解する教育・研究に挑戦しています。

(左)生物環境学実験実習(樹幹の観察)
(右)実験室内での樹木抽出成分の研究
森林資源政策学分野

森林・林業、住宅、環境問題などの歴史と現状について、経済学(林業経済学、住宅市場論)、政策論(林業政策学、森林法律学)、運動論の視角から、実証的・理論的に教育・研究を行っています。こうした教育・研究に当たっては、文献(資料)研究とともに、実態調査にもとづいて、地域に生活し労働する人間の側から分析・考察し、その発展的展望を切りひらくことを重視しています。

(左)完成した伝統木構法住宅全景
(右)山村に住む小生産者・労働者による非木材生産物の商品化
森林影響学分野

一本一本の樹木は、その場所の気象や土壌などの自然環境の影響を受けて成長し、その環境条件に耐えられたものだけが生き残り、やがてその場の自然環境に応じた形態の森林となっていきます。そして、いったん森林が成立すると、その成立した森林は今度は逆に、自らその周りの気象や土壌などに大きな影響を及ぼし、自然環境を変えていくようになります。こうした森林とそれをとりまく自然環境との相互作用や、その結果として生じる森林の公益的機能や、森林の形態の変化などについて、山から海岸までフィールドを駆けめぐりながら調査をしています。

(左)測量実習
(右)砂草の植生調査
環境情報システム学分野

現在、人間の影響の及んでいない環境は地球上にほとんど無いと考えられており、率先して環境を保全・管理していくことが求められています。森林から得られるさまざまな情報を収集・解析することで森林の動態が把握できますが、これらの情報は広域的な環境の保全を実現させるための管理技術やその考え方を明らかにしていく上で必要不可欠です。そのために、樹木の年輪や木々の配置など各種の森林情報を分析しながら、森林環境の総合的保全や管理計画について明らかにしていくことを目標としています。

実際の高齢材で森林内での3次元的な構造を観察する
森林文化論分野

山形大学農学部は、森林率が73%という鶴岡市にあります。この豊かな森林の諸資源を昔から人々は有効に活用し、また維持してきました。そこには、多様な暮らしの中で育まれてきた地域特有の文化が形成され、その知恵や技術などが今も継承されています。このような自然環境の中で、森林と人間のかかわりについて文化的な視点から調査研究に取り組んでいます。

(左)巨木をたずねて
(右)しな織りの樹皮採取

研究室紹介


職名
氏 名
教   育   研  究  分  野
HP
専 門
内        容








教 授 高橋 教夫 地域生態学 森林計画学と地域生態学  
教 授 大久保 博 河川環境学 河川環境と農業水利
教 授 奧山 武彦 地盤環境工学 地下水流動の解明と地下構造調査に関する研究  
教 授 岩鼻 通明 歴史地理学
文化地理学
文化・観光・交通地理学および韓国地域研究  
教 授 小沢  亙 農業経済学 地域計画と合意形成
准教授 家串 哲生 環境会計学 ・農業経営における環境会計の構築に関する研究
・農業経営における排出権取引に関する研究
准教授 石川 雅也 農地環境工学 環境保全型農業を支える農業基盤創成技術の開発とその応用  
准教授 小山 浩正 地域生態学 森林生態学









教 授 菊間  満 林業経済学 林業経済学と住宅市場論および労働者協同組合論  
教 授 野堀 嘉裕 森林環境情報学 林環境情報の解析と利用に関する研究
教 授 高橋 孝悦 森林資源利用学 森林,樹木の化学成分の解明とその利用  
教 授 林田 光祐 森林生態学 植物と動物の相互関係から見た森林の動態と生物多様性の保全
准教授 大谷 博彌 造林学 豪雪地帯における林地生産力と保全  
准教授 柳原  敦 砂防学 海岸防災林に関する研究  
准教授 芦谷 竜矢 森林資源利用学 森林資源の利用を目的とした分析・合成・材料化学  
准教授 小川三四郎 林業経済学
協同組合論
森林・林業の非営利組織に関する研究  
CONTENTS
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