研究テーマ:「赤川における河川改修工事後のニセアカシアの成長量」

 生物環境学科は、あらゆる自然環境の生態系や、人と自然との関わり等、様々な視点から環境を学ぶことができる学科です。私は、環境について幅広く学んでみたいと思い、この学科を志望しました。森林や河川、農場など実際にフィールドにでる機会が多いことも志望理由のひとつです。私が特に印象に残っているのは、森での実習によって葉や芽から様々な樹種を覚えることができたことです。実習を通して、森が豊かな環境であることを改めて実感することができました。私の研究テーマはニセアカシアという外来樹種について。ニセアカシアはその成長量の速さから在来の植物の生育を脅かし、今大変な問題となっています。成果を今後の外来種問題に生かせればと思い研究を進めていますが、調査中にアカネズミの食痕を見つけたり、冬場は白鳥の飛来を見たりと、たくさんの発見に出会えてとても楽しいです。その繁殖能力の強さから生態系を乱し、近年問題になっているニセアカシア。この様な細い根からも萌芽する。5〜6月に白い花を咲かせ、その蜜はハチミツの原料にもなっている。

森林環境資源学講座  森林影響学研究室/GM
(農学部学部案内2008より抜粋)


自信を育てよう

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これから始まる新しい生活に希望や不安で胸いっばいではないでしょうか。
 さて、皆さんは大学に入ったら何をするつもりでしたか? やろうと思えば何でも出来るところですが、これから始まる4年間という時間を、ぜひ濃いものにしていってほしいと思います。というのも、就職活動の際に「大学で何をしてきたか」ということがよく質問されるからです。勉強、部活、バイト、趣味・・・・・何についてでもいいのですが、そのときに自信を持って答えられるものがある人はとても強く、有利なのです。入学早々、4年後の就職の話ですみません。自分を高めることが結果的に就職で有利に働く、と言いたいのです。自分の自信になるものを探しに、またはもっと自信をつけるために、これからの4年間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
 ちなみに私は「炭焼きです」と答えました。研究室の活動として(正確には、演習林研究室と情報研究室の合同メンバーが主体となって行っている活動です)附属演習林にて炭焼きを行っているのです。女の子が炭焼きだなんて想像できますか? 私以外にも女の子はいますし、みんな薪割りから火入れまで、一通りはやれるんですよ。この製炭活動をしていることが自信なのではなく、この活動を通して、運営力ですとか、リーダーシップが身につき、目上の方や先輩・後輩との付き合い方なども勉強できたことが自信なのです。とまあこんな具合に、自分の自信を作ってほしいです。庄内は自然が豊かなので、学内外で自然と触れ合うことのできる活動や、イベントが盛りだくさんです。興味のある人は自分から進んで参加してみると、きっと素敵な出会いがあると思いますよ。皆さん自身の持ち味が見出されることを期待しています☆

地域環境科学講座 演習林研究室/AT
(山形大学学園便り,No.98より抜粋)


研究テーマ:「まちづくり」

 環境問題の現状を学び、これから世の中はどうあるべきかを考えたいと思い、この学科を選びました。ここでは人と地域との関わりあいや森林内の生態系など、あらゆる"環境"について学ぶことができ、自分の視野を広げることができました。演習では農場や森林、河川などいろいろなフィールドに出るので、教室内では学べないことに出会えます。
 私の研究テーマは"まちづくり"。地域のまちづくりのためには行政の力も大切ですが、住民の協力もなければ良いまちにはならないと考えています。良い地域づくりのために住民の組織はどうあるのがよいか、調査研究したいと思います。

地域環境科学講座 地域計画学分野/SS
(農学部学部案内2007より抜粋)


 私は現在、山形大学大学院農学研究科というところに所属しています。専攻は生物環境学ということになっています。「生物環境学」といってもそのフィールドは広く、河川環境学や地域計画学、森林生態学、森林資源利用学、森林資源政策学など様々な研究室があります。このため己の興味に応じて研究室を選択し、それぞれの道の専門家となるべく研究に没頭することになります。ただし「何を研究するか」ということについては己で決め己で答えをださねばなりません。大学院生ともなるとなおさらであり、何者にも拘束されませんが、学会などに出席し己の意見(論文)を主張しなければなりません。
 そしていま「生物環境学」は時代の激動と要求の中、混迷を極めております。安易な道を求めない革命児であるあなたの「変える力」を切望してやみません。

生物環境学専攻 河川環境学研究室/AT


教員からのメッセージ

 教育システムの大幅な見直しを2002年に始めてから6年が経過しました。1年生夏期セミナー、生物環境学のアプローチの導入教育から、生物環境学実験実習の充実、研究室入室制度と卒論指導体制の改善にいたるまで、新たに立てた10項目の具体的な教育目標に合わせて改善してきました。さらに、大学院修士課程の教育の充実をはかるため、高度な専門知識と技術を身につける方法を修得する講義科目や演習科目を大幅に充実させました。2002年に大学に入学した学生諸君が今年大学院修士課程を修了しました。これを機にこれまでの成果を検証して、さらに改善に努めることが大事なことだと考えています。
 特色ある教育内容のひとつを紹介します。生物環境学科の教育の特徴のひとつとして、野外フィールドでの実習や調査活動があげられます。講義室や研究室での授業と異なり、現場で体験できるメリットがある反面、危険も伴います。そのため、当学科では野外や実験室で安全に活動を行うための安全教育を重視しています。専門教育を本格的に始める2年生の前期授業に全員が必修単位として履修する生物環境学実験実習で、4月の最初の10時間を安全教育に充てています。「安全・快適なフィールド活動を行うために」という講義では、野外フィールドにどのような危険性が潜んでいるのか具体的にあげて、その危険を回避する方法を同時に紹介しています。また、服装や必需品などの装備を解説して、活動内容や場所、時期に合った準備が重要であることを説明しています。自分の身を守ることはもちろんですが、野外活動のリーダーとして活躍することも想定しています。さらに、実験室での火気や薬品の取り扱い方の基本などを教える講義、それに救急救命士を講師に招いて、実際に心肺蘇生法やAEDの使用法などの応急処置を訓練する講習も実施しています。このような安全教育が重要であることがようやく他の大学でも認識され始めているようです。
 大学院修士課程に再チャレンジ支援社会人特別選抜が加わり、生物環境学専攻でも昨年3名が入学しました。必修科目である生物環境学特論では、研究への取り組み方や論文執筆の方法などの講義を聞いた上で、自分の研究計画を発表して院生間で相互評価を行うという斬新な授業形態に、一般選抜の院生と一緒に取り組んでいます。その熱心な姿勢に多くの院生が刺激を受けているようです。高度な専門知識と技術を身につけた大学院修了生を社会に多く送り出すことが今後ますます重要視されることと思います。

平成19年度 生物環境学科長 林田 光祐


 生物環境学科では教育の改善に継続して取り組んでいますが、そのなかから近年実施されるようになったものを紹介します。
 山形大学農学部に入学した学生は、最初の1年間は小白川キャンパスで過ごします。この1年間に多くの教養科目とともに生物環境学概論などの基礎専門科目を受講しますが、さらに「1年生夏期セミナー」が加わりました。この科目は、演習林に宿泊してフィールドや模擬研究を体験し、生物環境学科でどのように学んでいくかを学生同士が議論しながら自ら確認する機会にもなっています。
 その後鶴岡キャンパスに移行して本格的な専門教育がスタートします。最初に学科全教員が2〜3日間ずつ担当して実施する生物環境学実験実習により、学科の多様な教育・研究内容や研究手法の概略を学びます。現在の専門教育では卒論研究はもちろん、レポート作成や自習においてもパソコンを利用した情報の検索や処理技術が必須になってきました。そこで2年次に基礎情報処理実習、3年次に上級情報処理演習を開講して情報処理教育の充実を図りました。
 学科では卒業論文を専門教育の集大成と位置づけ、論文作成過程における総合的な教育を重視しています。この教育改善の一環として、3年後期から研究室に仮入室する制度を導入しました。学生が3年前期中に多数の教員と相談を重ねるなかで、希望する卒論の主指導教員を決めます。3年後期からはその研究室のゼミにも参加し、4年生が卒論を完成していく過程を身近に学ぶことになります。こうして1年半をかけて卒論に取り組むことも可能になり、研究テーマの幅もずいぶん広がりました。なお卒業論文は主指導教員を中心に2人以上の教員グループで指導しています。
 さらに新たな資格取得の道も開かれました。これまでの測量士補のほかに、樹木医補の資格取得もできるようになりました。生物環境学科では社会に貢献していける学生を育てるために、これからも教育の改善に組んでいきたいと考えています。

平成18年度 生物環境学科長 高橋教夫


 生物環境学科では数年前から「生物環境学科の基本問題検討委員会」を組織して、教育理念の明確化、入試方法の改善、教育指導体制の整備、情報公開などについて議論してきました。具体的な改善内容は既に科目の親切や変更、学科独自のホームページの構築など多くの箇所に反映されています。特徴的な改善箇所としてはアドミッションポリシー及び教育理念と具体的な教育目標を明確化したことです。受験生に対しては「生物環境学科で求める人材像」が明示されたことになります。入学した学生に対してもどのように教育が行われるのかというシステムが大変理解しやすくなりました。たとえば、学科の教育理念や具体的な教育目標が明示されたのと同時に、各講義課目の具体的な教育目標がシラバスに明記されるようになりました。学生はシラバスをみることで授業内容を把握できるばかりでなく、教育目標を定めるための情報を得ることができるようになったのです。一方、特徴的な新しい講義科目としては1年生夏季セミナーという科目がスタートしました。この科目では、大学で勉学する意味についてのブレーンストーミングや生物環境学科に期待する教育の目標についての意識の整理をするための「生物環境学科のFD」という課題、学生の勉学意欲を促すために「卒業までのプログラム作成」という課題、また模擬研究などを実施しています。この新しい科目は生物環境学科に入学した学生の意思決定手段として極めて重要な位置づけとなっています。
 学年進行に伴い2005年度からは学部の教育改善に続いて大学院の教育改善にも取り組んでいます。大学院の教育改善でも最初にアドミッションポリシーや具体的な教育目標が明確化されました。そして、2006年度からは大学院の教育システムが大幅に変更され、生物環境学特論の創設、専門技術演習の創設、複数指導体制の確立、教育モデルなどが明示されるようになりました。大学院でどのように学び、何を履修することができるのかという内容が極めてわかりやすくなったといえるでしょう。生物環境学特論では、研究への取り組み方(問題発見・仮説創出→情報収集→解析→学会発表→論文執筆、投稿、出版)を体験することを目的として修士論文の研究計画を受講者自身が発表するという、斬新な教育システムがスタートします。専門技術演習は研究を進めていく上で必要な高度技能の習得を目的とした新しい科目で、修士論文の作成をサポートします。生物環境学専門演習TおよびUはこれまで行われていた研究室ゼミに相当しますが、複数指導体制で行われる科目となりました。

平成17年度 生物環境学科長:野堀嘉裕


湿原、氾濫源、湿地の回復と生物環境学

 戦後日本の開発政策は、多くの先進資本主義諸国と同様に、国内森林資源の造成を目的とした天然林の人工林化、水資源の確保を目的としたダム建設と河川改修、臨海地域の巨大開発を目的とした埋め立て等により、貴重な国民の財産である湿原、氾濫源、湿地・干潟を失いました。しかし、現在、ヨーロッパではその見直しが進み、脱人工造林の取組、氾濫源の回復、デルタ地帯の河口堰を開く運動等が進んでいます。それは、湿原、氾濫源、湿地の回復が、生物多様性と生物環境の維持にとりわけ重要な役割を果たすことが認識されたためです。湿原、氾濫源、湿地が広く展開した典型的な地域が庄内地域です。世界的課題と取り組む学問である生物環境学科を、このフィールドで学び問うて(学問)下さい。

生物環境学科教官 菊間 満

樹木の伐採風景 採材の様子