土壌学研究室ゼミ1                    1997.6.13

程 為国

 

研究題目: 

       

水田土壌におけるバイオマスの定量およびその動態に関する研究(1)

燻蒸温度がバイオマスの定量に及ぼす影響について

 

はじめに

クロロホルムを用いて燻蒸培養法あるいは燻蒸抽出法による土壌のバイオマスを定量することが多くの研究者によって行われている。畑土壌の場合は25℃で24時間燻蒸し、湛水土壌の場合は30℃24時間燻蒸するのが標準として用いられている。その理由の一つは糸状菌と細菌の最適な生育温度が違って、糸状菌より細菌のほうが高いためである。畑土壌では糸状菌のバイオマスが細菌より多く、25℃での燻蒸によって糸状菌の細胞が十分に殺されて、逆に湛水土壌では細菌のバイオマスが糸状菌より絶対に多くて、30℃での燻蒸によって細菌の細胞が十分に殺されると考えられる。しかし、25℃での燻蒸と30℃での燻蒸によって土壌のバイオマス量の差はどのぐらいあるかどうかまだ分かっていない。特に、湛水前の水田土壌にとっては湛水にすると湛水にしない間にも各種温度で燻蒸によって違う結果があると考える。ここでは、各種湛水前の水田土壌を用いて湛水にする場合と湛水にしない場合、および25℃での燻蒸と30℃での燻蒸を組み合わせて、バイオマスCとバイオマスNの定量に対する影響について検討している。

 

実験材料および方法:

実験土壌:下記の各種水田の湛水前土壌

    1、砂質水田土壌 (千葉県九十九里から)      

    2、多湿黒ボク土 (千葉大学園芸学部柏農場から)

    3、泥炭土 (千葉県東金から) 

 

 実験処理:

    125℃と湛水にする

    230℃と湛水にしない(畑状態)

    325℃と湛水にしない(畑状態)

    430℃と湛水にする

 

 測定項目:

    1)バイオマスC(クロロホルム燻蒸抽出法ーーTOCメータ法)

    2)バイオマスN(クロロホルム燻蒸抽出法ーーケルダール法)

 

結果および考察:バイオマスCについて

燻蒸抽出法で上記3種類土壌各処理でのバイオマスCを検討した。以下の結論があるとみとめられた。

1、3種類土壌の中で、柏農場の多湿黒ボク土非燻蒸土壌中の可溶性TOC含有量は高く、砂質水田土壌は非常に低いであった。(図1)

2、3種類土壌の可溶性TOC含有量が非常に違うのに、バイオマスCの含有量はほほ同じ程度600mg/Kg土くらいであった。その原因は不明だので、追試の必要性があると考えられる。

3、25℃での燻蒸と30℃での燻蒸によって土壌のバイオマス量の差は見られるが、もし規律な結論を得ようとするなら、もっと多くな各種サンプルを用いて再検討することが必要であると考えられる。(図4と図5)

4、湛水前の水田土壌にとっては湛水にすると湛水にしない燻蒸処理の間の差はあると認められた。湛水にした泥炭土壌を除いて、湛水にする場合は湛水にしないよりバイオマスCと可溶態TOC含有量がやや高いであった。(図1、図2、図3)その原因の一つは湛水にするより土壌中の難溶性TOCが燻蒸中でも、非燻蒸中でも可溶性になると考えられる(土壌の乾土効果のほかに、湛水効果もあるか?)。一方、土壌の水分含有量はクロロホルム蒸気の燻蒸土壌への浸透を影響することがないことも確認された。

 

今回実験の今後の予定:

 

1、バイオマス窒素の定量(実験中)

2、今回実験の土壌種類が3つのみだから、もっと湛水前土壌を用いて再検討する

3、湛水土壌を用いて直接に検討する 

 

その他の実験の予定:

 1、水田土壌におけるバイオマスの定量およびその動態に関する研究(2)

      水田土壌のバイオマスCとメタン放出量との関係

 

 2、水田土壌におけるバイオマスの定量およびその動態に関する研究(3)

      水田土壌における細菌と糸状菌のバイオマスの定量

 

3、水田土壌におけるバイオマスの定量およびその動態に関する研究(4)

                                水田土壌のリン酸肥沃度とバイオマス