土壌学研究室ゼミ3                     1997.10.12                                      程 為国 

 

基質誘導呼吸法による水田土壌における細菌と糸状菌のバイオマスの定量

【実験1】水分調整のためシリカゲルの添加が土壌呼吸量に及ぼす影響

 

1、実験目的:

基質誘導呼吸法(SIR法)は土壌中のバイオマス定量の1つ手法である。この方法では、基質(グルコース)の添加が必要である。しかし、土壌自身の水分含有量あるいは基質溶解剤とする添加水分が土壌の呼吸量を抑制することがある。このため、今までいくつか方法の統一性がない原因と考えられる。

本研究では、土壌の最適水分の調整のため、シリカゲルを用いて新方法を開発することを検討している。

 

2、実験方法:

 1)、供試土壌および前処理:柏農場から湛水前採集した多湿黒ボク土の水田土壌の湿潤原土は2mm篩を通し、最大容水量の60%に調整して、25℃2週間で前培養した。

2)、供試シリカゲル:粒サイズが425〜850μmで、関東化学製品の白色シリカゲルを用いた。実験により最大容水量は145%であった。

 3)実験処理(表1):

  A:対照区(CTR区);基質の添加をしない

  B:固体グルコースの添加区(Talc区)

  C:液体グルコースの添加と無水分調整区(NS1,NS2)

  D:液体グルコースの添加と無水分調整および振動培養区(NS3)

  E:液体グルコースの添加と水分調整区(S1,S2,S3,)

 4)、呼吸量(CO2)の測定:すべての処理では、1g乾土あたり前培養した湿潤原土を各種処理に調整し、40mlのフラスコに入れ、ダブル栓で密封し、25℃で培養後、30分と330分に定時にガスをとり、GCを用いてCO2を測定した。

 実験はすべて4連で行なった。結果はDumcanで有意差を求めた。

 

3、結果と考察:

今回の実験では、シリカゲルの調整区の呼吸量がかなり多かった。水分調整しないNS1とNS2区は対照区と比べて有意差が見られなかった。振動培養のNS3区は対照区と比べて有意差が見られたが、NS1、NS2、Talc区と比べて有意差が見られなかった。さらに、すべてのシリカゲルの調整区では、シリカゲルの量が多ければ多いほど、呼吸量も多かった。

以上から、土壌の呼吸量が土壌の水分含有量により巨大に影響されると考えられる。高シリカゲル添加区では、グルコースの溶液量も多く、グルコースも十分に分散されるのため、土壌の呼吸量が大きく増加したと考えられる。

 

4、今後の予定:

 1)別の土壌を用いて検討する

 2)土壌の最大呼吸量を求める

 3)呼吸量とバイオマスの関係を検討する

 4)修正する基質誘導呼吸法の確立

 5)修正する基質誘導呼吸法を用いた水田土壌の研究