環境土壌学ゼミ                                                        1997.12.11

                                                                                                                       97UD6205  程 為国

 

      

温室効果ガスの土壌中での動態

1、大気環境と生命の進化

150億年前と言われるビッグバンによる宇宙の創生から,百億年余りの長い進化の時を経て,45〜50億年前に地球は誕生した.そのあいだ,地球は太陽から大きなエネルギーを恒常的に受け続けた.太陽からのこのエネルギーと地球自身の創山活動や火山活動などの相互作用によって地球上に水圏,大気圏が形成された.その時,地球大気の主成分はCH4, H2であったそうだ.

 また,やく10億年を経て,35億年前に最初の生命が地球上に誕生した.この時に大気の主成分はCH4, H2からN2に変わった.メタン生成菌など古細菌はこの時代にはじめ登場したと考えられた.20億年前に地球の大気の主成分もN2 O2になった.特に,5億年前に生命のバリアーである貴重な成層圏のオゾン層を作りはじめた.その結果,植物や動物がようやく陸地に出現し始めた.

 

2、大気組成と温暖化

地球の大気の主成分は20億年前からN2 O2になってしまって,O2濃度も4億年前にほぼ21%に達し,さらに今までこの酸素濃度を維持し続けている.しかし,微量成分はずっと変化している.大気中に含まれる微量成分の水蒸気,CO2O3CH4N2OCFCsなどが地表からの赤外線を吸収して,地表付近の温度を高めている.これらのガス濃度が高ければ高いほど,熱放射に対する遮蔽効果も大きく,地表は高温の持たれる.この現象が温室効果で,熱を吸収する性質をもつこれらの気体を温室効果ガスと呼んでいる.  

図2ー11は過去16万年の地球大気中CH4およびCO2濃度と気温変化を示している。この図から大気のCH4およびCO2濃度の変動が気温の変動とよく一致することが分かられる。しかし、産業革命(1750〜1800年)以後の短い200年間には、人間の諸活動によって温室効果ガスが、まだかつて人類が経験したことがない濃度に増加してきている(表2ー2)。そのため、地球規模での温暖化が懸念されており、奮起になってその対策を練っている現状になっている。

 

3、温室効果ガスの発生源と吸収源

1)、二酸化炭素

大気中のCO2が過去200年にわたって一方的に増加傾向を示していることは、すでに広く認められる。IPCC の報告によると、1980〜1990年間のCO2の年間放出量とその行方は次のようにまとめられる。

   化石燃焼の消費      6.0±0.5 GtC ( Gt=10

   森林伐採と土地利用    1.6±1.0 GtC

   大気圏への蓄積      3.4±0.2 GtC

   海洋への取り組み     2.0±0.8 GtC

   不均衡          1.6±1.4 GtC

 まだ日本国については今の温暖化防止京都会議の関連ニュースによると、CO2の放出量の割合は以下の通りに報告される。

     産業排気    45% 

     家庭      20%  

     自動車排気   25

     他       10

 以上から、CO2の主要な発生量は産業による石油と石炭などの燃焼をあげられる。農業については森林開墾と耕地化による炭素が大気への放出を意味する。森林はCO2の主要な吸収源と考えられる。

 

2)、メタン

 メタンは二酸化炭素に次ぐ主要な温室効果ガスと言われる.メタンの発生源と吸収源は下の表2に示している.大気から放出されるメタンの起源には酸素のない生態系で微生物の働きによって生成されるものと微生物に由来しない過程で生成されるものとがある.発生量から見ると,人為発生量は自然発生量の2倍以上を超える.発生源のうち,農業生態系からの放出は水田(12%)と家畜(16%)をあわせて総放出量の28%を占める.メタンの吸収源については,ほぼ大部分が大気(対流圏と成層圏)に吸収された.土壌中のメタン酸化菌によりメタンが酸化されるので,土壌もメタンの吸収源の1つと考えられる.

3)、亜酸化窒素

CO2と同様な温室効果ガスであると同時にオゾン層発売の原因物質であるN2Oも現在最注目されているガスである.N2Oの発生源と吸収源は下の表3に示している.発生源も人為と自然に分けられる.N2OCH4と比べて,逆に自然発生源は人為発生源を超える.人為発生源のうち,農耕地から放出N2Oは人為総放出量の 60%占める.吸収源としては,成層圏での光合成が7割を占めて,大気での増加が3割を占めている.土壌が吸収源できるかどうかはまだ不明な状態に残ている。

 

4、農耕地生態系からのメタンと亜酸化窒素の生成

1)水田からメタンの生成

 水田土壌で生成されるCH4は2つ経路があることが明らかにされている.1つは,CO2+4H2ACH4+2H2O+4Aで示される炭酸還元反応であって,CO2に対する水素供与体(4H2A)として,水素,ギ酸,C以上の飽和脂肪酸,C2以上のアルコールが利用される.もう1つが,C*H3COOHC*H4+CO2で示される.これは,メチル基がその結合水素の損失なしにそのままCH4に転移するメチル基転移反応で,その基質としては酢酸,メタノールが利用される.水田で生成されたメタンは,1、水稲の器官を通して,2、気泡として,3、拡散を通して,のいずれかの経路で大気へ放出される.メタン発生量の変動に影響する要因は日および季節変動,土壌の種類による変動および肥培管理による変動などをあげられる.水田から発生するメタンの起源基質としては,1、土壌有機物,2、施用有機物,3、根由来有機物,等が考えられる.適切な水管理と適切な有機物管理は水田から発生メタンの主要な制御技術とも考えられる。

2)亜酸化窒素

土壌から大気に放出されるN2Oは土壌中の微生物が行なう硝化作用と脱窒作用によって生成される.非生物的過程で生成される場合があるが,一般的には量的にごく少ない.農耕地からN2Oの放出の要因は土壌中に施肥した窒素が硝化作用をうけ,その硝化の過程でN2Oが生成され,大気に放出される.逆に,熱帯森林土壌では脱窒過程で生成されるN2Oは硝化作用で生成されるN2Oより多い.施肥土壌から発生するN2Oの制御技術は硝化抑制剤の使用,施肥時間の改善,窒素肥料の分施,葉面散布の活用などをあげられる。

 

 

付:大気環境と生命の進化のリスト:        

 150億年前:ビッグバン

            元素の形成(約100億年間)

45〜50億年前:地球の誕生

            地球の大気の主成分はCH4H

            微量成分はNH3H2OH2SN2

 35億年前:最初に生命の誕生 

            地球の大気の主成分はN2

            微量成分はH2OCO2

  20億年前:光合成生物の誕生

            地球の大気の主成分はN2O2

            微量成分はArH2O

10〜6億年前:多細胞生物の進化の開

 5億年前:オゾン層をつくりはじめた

4億年前:大気のO2濃度はほぼ21%に達した

3.5億年前:土壌の生成ははじめ、シダ類全盛

3〜2億年前:裸子植物の出現

2〜1億年前:被子植物およびほ乳類の出現ほ乳類の進化

    

0.01億年前:人類の進化の開始