博士課程後期授業「微生物構造・機能論」(篠山先生)ゼミ

  1998630

土壌学研究室   程 為国

         

メタン酸化細菌の構造および機能の特徴

 

1、メタン酸化細菌の種類

メタン酸化細菌とはメタンを唯一の炭素源、エネルギー源として生育することをできる微生物である。メタン酸化細菌は、1906年に、Sohngenによってはじめて分離された。メタン酸化細菌の研究は、1950年以降盛んに行われ、分離された菌数も多くなった。

 メタン酸化細菌の分類学的研究で、大きな貢献をしたのはWhittenburyらである。彼らは、100菌株をこすメタン酸化細菌を分離し、細胞の形、休止期の細胞や細胞内膜構造のタイプなどにもとづいて、Methylosinus, Methyocystis, Methylomonas, Methylobacter,Methylococcus5属に類別化した。(表1

 メタン酸化細菌の中には、窒素固定能を有する菌種が多いことが報告されている。

 

2、細胞内膜構造

 メタン酸化細菌の細胞内には、報告されたすべての菌種に発達した内膜構造が観察されている。この細胞内膜の違いによってメタン酸化細菌は、二つのグループに分けられる。その一つは、折り重なった小胞状をした内膜が、細胞全体に分布しているもので、他方は、細胞の周辺に沿って内膜が配列しているものである。前者はmembrane typeT、後者はmembrane typeUと呼ばれている(第1図)。また、内膜構造とメタン酸化活性との間には、密接な関係があり、培養条件によって細胞内膜構造が変化することも認められる。

 

3、脂肪酸組成

 メタン酸化細菌の細胞内膜には特有の脂質が存在することがない。しかし、membrane typeTとはmembrane typeUの菌種で、脂質を構成している脂肪酸に特徴があると認められる。membrane typeTのメタン酸化細菌は16ー炭素鎖の脂肪酸が多く、一方、membrane typeU18ー炭素鎖の脂肪酸が多いこと、そしてどちらも不飽和結合を一個持つ脂肪酸が多いである。

 

4、メタン酸化細菌の代謝

 メタン酸化細菌のメタン代謝経路を第2図に示す。メタンはメタノール(CH3OH)に酸化され、次に、ホルムアルデヒド(HCHO)、蟻酸(HCOOH)と順次酸化をうけて二酸化炭素になる。メタンからメタノールへの酸化は酸素が要求し、メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)と呼ばれる酵素が関与している。メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸の一連の酸化はすべて脱水素酵素によって行われる。MMOには、内膜に付着したpMMOと、水溶性のsMMO2つの形態が確認されている。pMMOは、すべてのメタン酸化菌に存在するが、sMMOは、わずか数種類のメタン酸化菌にしか存在しない。また、MMOは基質特異性が低く、例えば、プロパンをプロパンノールに、プロピレンをプロピレンオキサイドに酸化するなど、広い範囲の化合物を酸化することができる。メタンからの炭素化合物の生合成経路は、Riburose monophosphste(RuMP)回路とSerine回路によって行われる。一般に、membrane typeTのメタン酸化細菌はRuMP回路を、membrane typeUのメタン酸化細菌は、Serine回路を利用する。

   

要 約

メタン酸化細菌はメタンを唯一の炭素源、エネルギー源として生育できる細菌群である。これあらの細菌は細胞内に2つのタイプの発達した膜構造を持っている。タイプTの膜構造を持つ菌種はRuMP回路によって炭素の同化を行い、タイプUSerine回路によって行う。

 

<参考文献>

1、武田 潔(1984)メタン酸化細菌の特徴と生態、 東北大農研報 36p59-66

2、内山裕夫(1995)メタン資化性菌と環境浄化、微生物機能の多様性(別府輝彦 編)

  35-46 学会出版センター