基肥窒素施用時期が水稲の基肥窒素吸収と収量に及ぼす影響 
        
藤豊・小野寺敬・川浪芳裕

山形大学紀要(農学) 12-2, 89-96 (1995)
 

水田での基肥窒素施用後の入水までの期間が水稲の施肥窒素吸収、水稲の収量に与える影響について圃場条件下で検討した。また、その期間中の土壌水分条件が施肥窒素の形態変化に与える影響について、室内培養法で検討した。得られた結果は以下の通りである。
 1) 室内培養実験の結果、土壌水分条件に無関係に施用窒素の無機態窒素としての残存量は時間の経過とともに指数的に減少した。無機態窒素としての残存量は圃場容水量60%水分条件下で80%水分条件下より少なかった。無機態窒素としての残存量は圃場容水量の60%水分条件下では硝酸態窒素としての残存が見られたが、圃場容水量の80%水分条件下では残存無機態窒素は全てアンモニア態であった。
 2) 圃場実験の結果、施肥後入水までの期間が増加するにつれて入水時点での施用窒素の無機態、有機態窒素としての残存量は減少した。施肥後入水までの期間中に降雨量が多く。圃場容水量を超える水分含量であった年次は、水分含量の少ない年次に比較して施肥窒素の無機態窒素としての残存量は多くなった。入試後の施肥窒素のアンモニア態窒素量は施肥後入水までの期間と関係し、入水までの期間が長くなるにつれて少ない量で推移した。しかし、施用窒素の消失時期は施肥後入水までの期間と無関係に6月下旬であった。
 3) 施肥後入試までの期間中降雨量の少なかった年次の施肥窒素の水稲による利用率は、施肥後入水までの期間が10日間で0日間に比較してやく1/3となった。一方、降雨が多く、土壌水分が圃場容水量を越えた年次は施肥窒素の水稲による利用率と施肥後入水までの期間の間には一定の関係が認められなかった。水稲の収量は施肥窒素の利用率が高い条件で高くなった。

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