水稲品種が追肥窒素の脱窒におよぼす影響
○角田憲一・安藤豊・斉藤、高砂健

 水田土壌へ施用される追肥窒素の一部が脱窒作用により失われることが知られている。これまで演者らは、水稲の施肥窒素吸収ならびに土壌中での施肥窒素の有機化が根圏からの脱窒を抑制することを明らかにした。しかし、水稲の生育中期では表層施肥が一般的であり、この時期の脱窒は主に土壌表層の酸化ー還元層で生ずることが知られている。一方、幼穂形成期以降ではうわ根が発達することから、土壌表層の脱窒には水稲根の影響があると考えられる。水稲の品種間や水稲と他の植物では、根の形態、生理活性ならびに窒素吸収能力の違いにより、追肥窒素の利用率ならびに脱窒量が異なるものと予想される。本報告では水稲の5品種およびヒエを用い、生殖生長時期に表層施用された窒素の脱窒に及ぼす要因について検討した。

(実験方法) 
1)栽培方法 山形大学付属農場の水田作土より採取した土壌を使用。500mLプラスチックビーカーに水稲およびヒエの苗を1株(1本) 移植。
2)供試植物(水稲品種)はえぬき、コシヒカリ、アキヒカリ、陸羽132号、亀の尾、(ヒエ)タイヌビエ。
3)窒素追肥 穂ばらみ期に重窒素硫安溶液をポット当たり4mgN表層より施用。
3)試料採取ならびに分析項目 施肥後8日に土壌および植物を採取。施肥由来の田面水中アンモニア態窒素、施肥由来の交換性アンモニア態窒素量、植物による施肥窒素吸収量、施肥由来の固定窒素量。

(結果)
1)施肥由来の田面水中アンモニア態窒素および交換性アンモニア態窒素はいずれの植物のポットにおいても認められなかった。
2)植物の施肥窒素吸収量では、植物間ならびに品種間に大きな差は認められなかった。
3)施肥由来の固定窒素は施用量の30-43%を示した。
4)重窒素差引法より求めた推定脱窒量は、施肥由来固定窒素の大小により決定される傾向にあった。
 
 
 

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