水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割
第10報 ケイ酸吸収の制限要因
○藤井弘志・安藤豊・小松宝栄・角田憲一・横山克至・安藤正・渡部幸一郎
 

【目的】演者らは、前報までに水稲の生育・収量・食味に対するケイ酸の効果を明らかにしてきた。しかし、水稲によるケイ酸吸収量を左右する要因については明らかにされていない。そこで、本報告では、ケイ酸供給量の異なる5ケ所の水田土壌を供試して、生育時期別の水稲のケイ酸吸収に及ぼす要因を稲体側(乾物生産量)と土壌側(ケイ酸供給量)に分けて検討した。

【試験方法】
1)供試水田土壌:酒田市本楯・関、藤島町藤島、鶴岡市民田・伊勢横内
2)栽培概要:品種→はえぬき、試験区→標準区(基肥窒素量:4?6kg/10a)、多肥区(基肥窒素量7?9kg/10a)、ケイ酸区(標準区+シリカゲル200kg/10a)、その他の肥培管理→慣行、
3)調査・分析項目:土壌のケイ酸供給量(逐次水抽出法で求めたケイ酸量を10aに換算して算出)、水稲のケイ酸吸収量・窒素吸収量(6/6,6/26,7/21,8/3,9/8の5回)、生育・収量

【結果】
1)成熟期における水稲のケイ酸吸収量は(標準区)、関>本楯>藤島>民田=伊勢横内の順で、土壌のケイ酸供給量(逐次水抽出法)と同じ傾向であった。
2)時期別の水稲のケイ酸吸収速度(kg/1日)をみると、5/10-6/6が0.03-0.04、6/7-6/26が0.3-0.4、6/27-7/21が1.0-1.2、7/22?8/3が0.7-2.0、8/4-9/8が0.8-1.6であり、水稲のケイ酸の吸収速度は、7/21(幼穂形成期頃)までは土壌間の差(土壌のケイ酸供給量)が小さかったが、7/21以降は土壌間の差が大きくなった。
3)水稲のケイ酸吸収に及ぼす稲体側の要因(標準区と多肥区の比較)と土壌側の要因(標準区とケイ酸区の比較)の影響の程度は、生育時期と土壌のケイ酸供給レベルによって異なり、7/21(幼穂形成期)頃までは多肥や密植による水稲の乾物生産量が、7/21以降は土壌のケイ酸供給量(ケイ酸施肥も含む)が影響した。
 
 
 
 
 

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