水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割
第11報 土壌のケイ酸供給力と水稲のケイ酸吸収?圃場試験?
○ 松田裕之・安藤正・藤井弘志・横山克至・渡部幸一郎・安藤豊
 

[目的]ケイ酸資材は土壌改良材として一般的に使用されているが、黒ボク土壌ではその肥効の低さが課題となっている.本研究では、黒ボク土壌においてケイ酸資材投入の有無によるケイ酸供給力の異なる圃場を用い、水稲ケイ酸吸収パターンの差異を検討した.

[試験方法]
1)供試圃場:黒ボク土壌(新庄市角沢)
2)土壌ケイ酸供給力:高圃場(ケイカル・ようりん120kg/?を各5年間施用)、低圃場(ケイカル・ようりん各5年間無施用)
3)品種:どまんなか?施肥窒素:基肥5g/m2、幼穂形成期2g/m2
4)管理:慣行による
5)調査・分析項目:土壌ケイ酸供給量(リン酸緩衝液法、培養法)、稲体乾物重・稲体ケイ酸濃度・稲体ケイ酸吸収量(逐次)

[結果]
19黒ボク土壌における土壌ケイ酸量は、リン酸緩衝液法では高圃場=低圃場、培養法では高圃場>低圃場であり、培養法による土壌ケイ酸の評価が適する.
2)高圃場の稲体ケイ酸吸収量は、移植後27日では低圃場比145%でその差は時期とともに拡大し、穂揃い期は低圃場比201%であった.?稲体乾物重はどの時期も高圃場で高く、移植後35日以降は低圃場比110%程度で推移した.
3)稲体ケイ酸濃度はどの時期も高圃場で高く、かつ時期とともに高まり、穂揃い期は低圃場比178%であった.一方、低圃場では時期による変動は認められなかった.m2当たり頴花数は高圃場で高く、これは一穂頴花数に大きく起因している.精玄米重は高圃場で多く、低圃場比123%であった.
以上のことから、黒ボク土壌におけるケイ酸資材の連年施用は、稲体が吸収できる土壌ケイ酸を富化させ、その効果は生育前半から稲体乾物重と稲体ケイ酸濃度の増加として発現する.とくに、幼穂形成期以降の稲体ケイ酸濃度を高める効果が大きく、これが一穂頴花数の確保や登熟期間の光合成活性に有利に働いたと推定された.
 
 
 
 

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