水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割
第12報 土壌のケイ酸供給力及び吸着能と水稲生育初期のケイ酸吸収 -ポット試験-
○ 安藤正・藤井弘志・横山克至・松田裕之・渡部幸一郎・安藤豊
 

[背景と目的]演者らは第5報で黒ボク水田におけるケイ酸吸着現象を明らかにし、黒ボク水田のケイ酸供給力にケイ酸吸着が関与していると推定した。また第11報の圃場試験では黒ボク土の可給態ケイ酸の評価は培養法が適していた.本報告ではポット試験により黒ボク水田の最高分げつ期までのケイ酸吸収量を土壌間で比較し、水稲ケイ酸吸収量に影響をおよぼす土壌の性質について検討した。同時にケイ酸資材の施用効果の土壌間差についても検討した。

[材料と方法]
品種:はえぬき、土壌:沖積埴壌土1点、山形県内の黒ボク水田土8点、熊本県黒ボク水田土1点、施肥:8gN/?(化成肥料)、60gSiO2/?(シリカゲル、ケイカル)相当を全層施用、栽培方法:中苗を1/5000aワグネルポットに移植、最高分げつ期にサンプリング、分析:水稲のケイ酸吸収量、土壌の可給態ケイ酸含量、リン酸吸収係数など

[結果と考察]
1)ケイ酸無施用区において、山形県内の黒ボク水田における水稲ケイ酸吸収量は沖積埴壌土のそれと比較して少なかった。一方熊本県黒ボク水田における水稲のケイ酸吸収量は最も高かった。水稲ケイ酸吸収量は培養法による可給態ケイ酸含量と高い相関を示した.
2)リン酸吸収係数が高いほど土壌のケイ酸吸着能が高かった.またケイ酸溶出量が特に高かった熊本県の黒ボク土を除いて、土壌のリン酸吸収係数が高いほど可給態ケイ酸含量および水稲ケイ酸吸収量が低い傾向にあった。このことから土壌のケイ酸供給力にはケイ酸の溶出と吸着の双方が関与していると考えられた.
3)ケイ酸資材の施用により水稲のケイ酸吸収量が増加したが、山形県内の黒ボク水田における吸収量の伸び率が沖積水田および熊本県の黒ボク水田に比較して高かった.
 
 
 
 
 

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