水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割  第13報 ケイ酸施用と葉身温度

○ 安藤豊・角田憲一・藤井弘志・國木由美子・阿部金一郎

 水田へのケイ酸施用に伴い、水稲個葉の光合成速度が促進することが知られている。この理由として、ケイ酸含有率の増加に伴い葉身からの蒸散が抑制され葉身中の水分量が高く維持され、気孔開度が維持されることにあると考えられている。水分量が高く維持されることは、炭酸ガスの取り込みのみならず、見かけの光合成速度に影響を与える葉温の調節にも何らかの役割を果たしているものと考えられる。しかしながら、葉温調節に果たす水分含量の影響について検討した例は見られない。そこで、ケイ酸施用と葉温の関係を葉身の水分含有率および蒸散からポット試験で1999年、2000年の2カ年検討した。

【材料および方法】
供試土壌:沖積水田土壌、施肥量:基肥としてNPKをそれぞれ0.12g/pot施用、またNは葉色を見ながら適宜追肥。ケイ酸施用量:0および3.6g/pot施用の2区。供試品種:はえぬき(3.2葉苗を4本/株を1株/ポットで移植)。測定時期:出穂期および登熟中期。測定項目:葉温(熱伝対による測定)、水分含有率、蒸散量(重量の減少と葉面積から算出)、葉面積、ケイ酸濃度(重量法)。

【結果】
1)ケイ酸施用に伴い葉身のケイ酸濃度は増加した。
2)葉温の変化は気温より、日射時間に大きく左右された。
3)’99年はケイ酸施用区の葉温は無施用区に比較して低かった。一方、’00年は無施用区の葉温が施用区に比べ低かった。
4)葉面積あたりの蒸散量をみると、'99年は無施用区でケイ酸施用区より高かったが、’00年はケイ酸施用区と無施用区に差が認められなかった。
5)’99年の葉身水分含有率はケイ酸施用区で高かった反面、’00年はケイ酸施用区で低くなった。
6)以上から、葉温は蒸散量より葉身の水分含有率に大きく左右されるものと見られる。
 
 

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