インドネシア耕地土壌における施肥窒素の腐植画分への分配
○阿部倫則・渡辺 彰・安藤 豊

施肥窒素の一部は、土壌中で有機化され長期間のうちにより安定な形態へと変化して
ゆくと考えられるが、有機態のうち菌体成分以外の有機態窒素の挙動に関する報告は
少ない。本研究では、熱帯土壌における施肥窒素の各腐植画分への固定を圃場実験に
よって調べた。
【材料および方法】インドネシア 南スマトラのキャッサバ間作畑およびジョグジャ
カルタ郊外の水田において、基肥として15N標識(50または30 atom-15N%)尿素あるい
は非標識尿素を慣行量施用し、作物収穫時(施用後300日または100日)に土壌を採取
した。NAGOYA法に従い腐植を腐植酸、フルボ酸、ヒューミンに分画し、フルボ酸は
PVP樹脂により腐植物質・非腐植物質画分に細分画した。さらに土壌および各腐植画
分に6M HClを加え 115℃で24h加水分解し、残さを得た。得られた各試料について、
炭素、窒素含量およびatom-15N%を測定し、施肥由来窒素量を求めた。
【結果】(1)土壌全窒素の腐植酸、フルボ酸、ヒューミンへの分配率は、畑土壌で9、
26、54%、水田土壌で8、10、54%であった。
(2)施肥由来窒素の腐植酸、フルボ酸、ヒューミンへの分配率は、畑土壌で15、27、
52%、水田土壌で14、20、54%で、いずれも全窒素と比較して腐植酸への分配率がより
大きかった。
(3)フルボ酸中の施肥由来窒素は畑、水田土壌とも3-4%しかPVP吸着画分に分配され
ず、そのほとんどが非腐植物質として存在していたことが示唆された。
(4) 加水分解残さのatom-15N%は、いずれの画分においても分解前よりも低く、特に
フルボ酸PVP吸着画分で減少率が大きかった。
(5) 土壌、ヒューミン、腐植酸、フルボ酸PVP吸着画分中の施肥由来窒素は、畑土壌
で8、9、10、27%、水田土壌で10、17、14、17%が加水分解残さから検出された。
 
 

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