産米の食味向上に関する研究
第13報 良食味栽培理論と現場における波及効果

○藤井弘志 ・松田裕之 ・安藤豊 ・横山克至 ・柴田康志 ・森静香 ・安藤正 ( 山形農試庄内支場、 山形大農)

【食味向上のための肥培管理技術の体系化】
実際に、現場の食味向上を図るには、食味向上理論とともに食味向上のための導入技術を体系的に示すことが必要である。そこで、現在までに報告した食味向上理論とそれを可能にする技術体系を示す。
1)産米の食味を示す指標であるタンパク質含有率は、1粒重当りに含まれる窒素量によって決定される。タンパク質含有率を低下させるには@籾生産効率を向上させ1粒当り窒素量を少なくすることA登熟を良好にして千粒重を向上させることが必要である。2)籾生産効率を高める技術としては@籾生産効率の把握による籾数確保への戦略の決定Aケイ酸施用による乾物生産能力の向上B適期窒素追肥があげられる。3)登熟を高める技術としては@根の活力を低下させない水管理(中干し)施肥管理(多肥の防止)の実施Aケイ酸施用による登熟期間中の光合成能力の向上があげられる。    
【現場への食味向上技術の波及効果】
(試験方法)1994〜2000年に全農庄内で実施している作柄診断ほ(30ケ所)における収量・精米タンパク質含有率・収量構成要素・窒素吸収量・耕種概要を解析し食味向上技術の現場における波及効果を検証する。
(結果)1)本研究の成果は、1995年には食味向上のメカニズムおよび多肥の弊害が理解され施用窒素量の適正化が図られタンパク質含有率の低下に結びついた。2)1996年には水稲の光合成能力を向上させるためのケイ酸の必要性を啓蒙して水田土壌に対する土づくり肥料の施用を進め、その結果、1994年の精米タンパク質含有率を100とした時に2000年のそれを約20%低下させた。3)さらに、窒素吸収量とタンパク質含有率の関係から、玄米タンパク質含有率を7%以下にするには、成熟期の窒素吸収量を12kg/10a以内にする必要があることを示した。

 
 

講演要旨一覧に戻る

栽培土壌ホームページへ戻る