水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割

第14報 水田土壌のケイ酸供給能に関する土壌区分

安藤正・藤井弘志・横山克至・松田裕之・佐藤之信・安藤豊

[研究の目的]水稲栽培において効率的なケイ酸施用を行うには、天然供給力および資材の利用効率を考慮する必要がある.土壌のケイ酸供給源については、沖積土壌について高橋らが粘土含量との関係を検討しており、黒ボク土では脱ケイ酸作用の強弱が関与し、コロイド組成によって大別されると想定された.またこれまでに演者らは黒ボク土壌でケイ酸の土壌吸着が顕著であることを明らかにした.そこで本研究では、土壌をケイ酸の溶出・吸着の二要因で評価し、その特徴を土壌タイプ別に類型化することを目的とした.

[材料と方法]供試土壌:沖積土壌14点、黒ボク土壌18点(非アロフェン質10点、アロフェン質8点)
分析項目:ケイ酸溶出吸着特性、可給態ケイ酸含量(培養法、40℃7日間)、リン酸吸収係数、粒径組成(沈降法)

[結果と考察]@沖積土壌の可給態ケイ酸含量を粒径組成別に比較すると、S(砂土)が最も低く、L(壌土)→CL(埴壌土)伸iC(軽埴土)と細粒になるにしたがい高くなった.各画分と可給態ケイ酸含量の関係は、相関の高い順に砂→シルト→粘土であった.砂含量が多いほど可給態ケイ酸含量が低い傾向にあるが、粘土とシルトの割合は沖積土壌で比率が相似しているためケイ酸の給源を特定するにはいたらなかった.A黒ボク水田土壌では、非アロフェン質黒ボク土で可給態ケイ酸含量が低く、アロフェン質黒ボク土で高い傾向にあった.B各土壌のケイ酸の溶出吸着特性を回帰式Y=aX+bで表した.リン酸吸収係数の高い土壌ほど回帰式の傾きaが負の値を示した.このことから、リン酸吸収係数が大きいほどケイ酸吸着能が高く、特に黒ボク土でケイ酸吸着現象が顕著なことが明らかとなった.C以上の結果から、土壌のケイ酸供給に関する土壌区分を作成した.

 
 

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