陸稲根系の土壌層位別吸水特性 −土壌乾燥後の再潅水に対する反応−

O岡田佳菜子・近藤始彦*・安藤豊・角田憲一 (山大農、JIRCAS*)

著者らは前報において幼穂形成期陸稲の短期土壌水分ストレス条件で深さ別根系吸水特性を調べ、低土壌水分域では表層(0-20cm)と比較して下層の根長当り吸水速度が低くなることを明らかにした。一方、再潅水後の吸水を高めることは水ストレス下と同様土壌水分が制限された環境で作物が生育するための重要な耐乾性戦略と考えられる。本実験では水ストレス-再潅水後の土壌層位別陸稲根系吸水特性を明らかにすることを目的とした。

【方法】直径20cm高さ110cmの塩ビ管に土壌を詰め、陸稲を一定施肥、潅水条件で生育させた。土壌は深さ20cmごとに5層に分け、層位間には土壌水分の移動を防ぐためにパラフインを薄く敷いた。播種78日後に全層の潅水を停止し、水ストレスを12日間加えた。水ストレス後全層を再潅水し、再潅水後0-8日間の吸水特性を調べた。測定項目は再潅水前と後の土壌層位別根長、層位別吸水速度及び総吸水速度とした。再潅水後の層位別根長当り吸水速度は常時潅水栽培した陸稲の値と比較した。

【結果】(1)再潅水直前の総吸水量は0cm3 pot d-1まで低下した。(2)再潅水直後葉身のローリングは回復し、再潅水3日後には完全に開いていた。(3)再潅水3-8日後の総吸水速度は水ストレス直後の値まで回復した。このとき20-40cm以外の層からの吸水速度は水ストレス直後の値もしくはそれ以上まで増加した。(4)再潅水3日前から8日後にかけて根長は、60-80cmで増加したが、総根長には優位な増加は認められなかった。(5)再潅水3-8日後の根長当り吸水速度を同土壌水分下の常時潅水栽培した植物の値と比較した場合、20-40cmでは低く、他層では同程度の値となった。これらのことから20-40cm以外では再潅水後すぐに水ストレス前の状態まで吸水速度は回復することが明らかとなった。

 
 

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