水稲品種の違いが施肥窒素利用率に与える影響
角田憲一・野副卓人*・安藤 豊 (*:IRRI)

水稲の施肥窒素利用率は一般に低い。水稲の施肥窒素利用率を向上させることは、効率的な施肥技術を確立する上で重要である。これまで、葉色板や葉緑素計を用いた施肥時期の決定により、施肥窒素利用率を向上させることが知られている。しかし、基肥を含めた施肥窒素の利用率を向上させるためには、品種の選定や栽培方法の改善がさらに必要となる。本報告では、現在国際稲研究所で多収稲として育成されている水稲品種を用い、水稲品種および裁植密度が施肥窒素利用率に与える影響について検討した。


<試験方法>・試験地:国際稲研究所内水田・試験時期:2002年ト5月(乾期)および2002年6−10月(雨期)・供試品種:R72(IR)およびIR68544-29-2-1-3-1-2(NPT)・裁植密度:25および50株m−2・処理区:2品種と2裁植密度の組み合わせによる4処理区(IR−25,IR−50,NPT−25,NPT−50)・基肥:N:P205:K20=40:60:60 kgha-1(乾期),30:60:60kgha-1(雨期)・追肥窒素:分げつ期−幼穂分化期=40−40 kgha-1(乾期),30−30kgha-1(雨期)

<結果>・出穂期:(乾期・雨期)NPTはIR72よりも2週間遅くなった。・地上部乾物重:(乾期)品種および裁植密度の影響は認められなかった。(雨期)IR−50>IR−25>NPT−50=NPT−25・地下部乾物重:(乾期)NPT−50>NPT−25=IR−50>IR−25(雨期)NPT-50=NPT-25>OR-50=IR-25・基肥窒素利用率:(乾期)IR-50=IR-25>NPT-50=NPT-25(雨期)品種および裁植密度の影響はみられなかった。・分げつ期に施肥した追肥窒素利用率:(乾期)品種および裁植密度の影響はみられなかった。(雨期)IR-50=IR-25>NPT-50>NPT-25・幼穂分化期に施肥した追肥窒素利用率:(乾期・雨期)品種および裁植密度の影響はみられなかった。以上から、高収稲として育種されているNPTは大きな地下部乾物重を持つが、施肥窒素利用率は増加しなかった。裁植密度を高くすることで地上部あるいは地下部乾物重が増加する場合があったが、施肥窒素利用率は増加しなかった。




 

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