水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割
第15報 黒ボク水田土壌のケイ酸溶出と水稲によるケイ酸吸収
安藤 正*・松田沙知・藤井弘志*・安藤 豊(山形農試庄内支場)


[研究の目的]
 黒ボク水田土壌は、水稲栽培におけるケイ酸供給力やその評価法などで不明な点が多かった.演者らは第14報で、従来ケイ酸供給力が高いとされていた黒ボク水田土壌にケイ酸供給力の違いを認め、非アロフェン質黒ボク土で可給態ケイ酸含量が低く、アロフェン質黒ボク土で高い傾向にあることを明らかにした.本研究では、ケイ酸供給力の異なる黒ボク水田土壌で、土壌の理化学性、イネのケイ酸吸収、土壌溶液のケイ酸濃度を検討し、黒ボク水田土壌のケイ酸溶出と水稲のケイ酸吸収の関係について考察した.
[材料と方法]供試土壌:黒ボク土3点(熊本、栃木、新庄)ポット栽培:稚苗を1/5000aワグネルポットに移植し、2週間ごとにサンプリング 分析:可給態ケイ酸含量、リン酸吸収係数、選択溶解、水稲のケイ酸吸収量、土壌溶液ケイ酸濃度


[結果]1.いずれの土壌もリン酸吸収係数が高かった。
2・たん水保温静置法による可給態ケイ酸含量は熊本>栃木>新庄であった。
3.熊本、栃木の酸性シュウ酸塩可溶アルミニウム、ケイ素含量が多かったのに対し新庄は少なかった。
4.栽培期間中のポットの土壌溶液のケイ酸濃度は、7月初旬で熊本>栃木>新庄であった.いずれの土壌も7月下旬から8月上旬にかけて濃度が減少した。
5.成熟期の乾物重は熊本>栃木≒新庄、土壌溶液濃度は熊本≒栃木>新庄、イネのケイ酸含有率は熊本>栃木>新庄となった.

[考察]l.異なる黒ボク水田土壌で水稲へのケイ酸僕給力が大きく異なることが明らかとなった。
2.たん水培養による可給態ケイ酸含量はイネのケイ酸吸収を相対的に表現すると考えられた。
3.土壌溶液のケイ酸濃度は、生育前半は土壌間差が明確であったが、生育時期、生育量の影響を受けることにより必ずしも土壌のケイ酸供給力の違いを反映していなかった.




 

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