水稲の生育・収量に果たすケイ酸の役割
第16報 黒ボク水田土壌のケイ酸供給力評価法
安藤 正*・松田沙知・藤井弘志*・安藤 豊(山形農試庄内支場)

[研究の目的]水稲にとって有用元素であるケイ酸の50%以上は土壌による供給である.効率的なケイ酸資材施用によって水稲の生育・収量の向上を図るため、土壌のケイ酸供給力評価とそれにもとづくケイ酸施用量の算出が必要である.しかし、黒ボク水田土壌のケイ酸供給力評価法は確立されていない」寅者らはこれまでに、コロイド組成の異なる黒ボク水田土壌のケイ酸供給力が異なること、ケイ酸溶出に土壌のケイ酸吸着能が関与していることを明らかにした.本研究では、これまで明らかにした黒ボク水田土壌のケイ酸溶出、吸着の違いをもとに、黒ボク水田土壌で適用が可能なケイ酸供給力評価法について検討した.

[材料と方法]供試土壌:アロフェン質黒ボク土5点、非アロフェン質黒ボク土6点、その他(沖積土など)9点栽培試験:稚苗を1/5000aワグネルポットに移植し、成熟期にサンプリング 分析:各種可給態ケイ酸含量測定法、選択溶解、リン酸吸収係数、水稲のケイ酸含有率

[結果と考察]1.ケイ酸溶出・吸着特性の直線回帰式から求めた土壌のケイ酸吸着強度は、リン酸吸収係数と負の相関関係にあり、黒ボク土はケイ酸吸着強度が高く、沖積土は低かった.
2.成熟期の水稲のケイ酸含有率は、アロフェン質黒ボク土で高く、非アロフェン質黒ポク土で低い傾向にあった.
3.リン酸吸収係数の高い土壌と低い土壌を区別すると、水稲のケイ酸含有率とリン酸緩衝液抽出法による可給態ケイ酸含量の間にそれぞれ密接な相関関係が認められた.
4.水稲のケイ酸含有率と培養によるケイ酸溶出量の間にも高い相関が認められたが、培養の温度条件などで相関関係が異なった.
5.以上の結果から、黒ボク土壌の回帰式を沖積土と区別して得ることで、リン酸緩衝液抽出法が黒ボク土のケイ酸供給力評価法として使用することが可能であると考えられた.






 

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