サゴヤシ生育地の土壌ー窒素の挙動に関わる土壌要因ー

角田憲一・安藤豊・吉田徹志・山本由徳・新田洋司・江原宏・後藤雄佐・ベニトHプルワント

SAGO PALM 8-1, 9-16 (2000)
 

サゴヤシの窒素に関する栽培管理の基礎的なデータを得る目的で、現地の土壌断面調査を行い、土壌の化学的性質及び土壌窒素無機化量について検討を行った。インドネシア国リアウ州テビンティンギ 、マレーシア国サラワク州ムカ 、マレーシア国ジョホール州バツパハト、タイ国ナラチワトの土壌断面調査、土壌の化学的性質及び土壌窒素無機化量について調査した。テビンティンギ、ムカ及びバツパハトには泥炭土壌及び鉱質土壌が存在した。ナラチワトには鉱質土壌が分布していた。泥炭土壌のpHは4以下を示し、鉱質土壌よりも低いpHを示した。泥炭地帯の地下水中アンモニア態窒素は0.1-0.5 mg l-1であり、サゴヤシの生育に影響を与えるものと予想された。陽イオン交換容量(CEC)は、鉱質土壌 < 泥炭土壌であった。一方、CEC pH4 / CEC pH7 は鉱質土壌で0.9 以上を示す土壌が多く存在したが、泥炭土壌では0.7-0.9を示す土壌が多く存在した。したがって、泥炭土壌の窒素吸着強度は鉱質土壌に比べて弱いことが予想された。泥炭土壌の窒素無機化量は鉱質土壌のものに比べ高い水準にあった。易分解性窒素量は泥炭土壌で3.5mg kg-1前後、鉱質土壌では0.9mg kg-1 前後であった。泥炭土壌の無機化速度定数 k は鉱質土壌に比べて高い傾向にあった。活性化エネルギーは泥炭土壌と鉱質土壌に差は認められなかった。ムカとテビンティンギ両地域における泥炭土壌の容積重は0.15-0.20g cm-3、鉱質土では0.90-1.10g cm-3であった。容積当たり窒素無機化量は鉱質土壌よりも泥炭土壌で低いことが示された。また、容積当たりのCECでは、泥炭土壌は鉱質土壌よりも低くいものと予想された。本試験の結果より、泥炭土壌と鉱質土壌に生育するサゴヤシの生育差は、土壌の窒素栄養からある程度説明できるものと推察された。
 

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