水稲生育初期の茎数と土壌アンモニア態窒素の関係             
 
安藤豊・安達研・南忠・西田直樹

日本作物学会紀事  57-4, 678-684 (1988)
 

要旨

 圃場における水稲の生育初期の茎数の差異を、土壌中の交換性アンモニア態窒素量と土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度の面から検討した。ポット試験ではゼオライトを添加し、移植直前の土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度を17ppm、7ppm,3ppm、および0ppmとした。ポット試験では、塩基交換容量(以下CECとする)の異なる水田を利用した。さらに、庄内地域の既存のデータから、水田土壌のCECと生育初期の茎数の関係を検討した。
 1) ポット試験の高温区(昼25℃/夜15℃)では、生育初期の茎数は試験区間で差がなかった。一方、低温区(昼20℃/夜10℃)では、土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度が高いほど生育初期の茎数は多くなった。なお、交換性アンモニア態窒素量はゼオライト添加の有無にかかわらず同一であった。
 2) 圃場試験では、交換性アンモニア態窒素量が同一であっても、CECの高い圃場では、土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度が低かった。水稲の生育初期の茎数は低温年次には、土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度の高い圃場で多くなった。司会、高温年次には、土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度と生育初期の茎数は無関係であった。
 3) 水田土壌のCECと生育初期の茎数との関係は、低温年次には有意の負の相関が認められた。一方、高温年次には、有意の相関が認められなかった。
 4) ポット試験の低温区は、庄内地域の平年気温とほぼ同様の温度設定であるので、平年並みの気温条件の年次には、水稲の生育初期の茎数は、土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度に強く影響されるものと見られる。
 
 

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