日本土壌肥料学雑誌 60-1, 8-14 (1989)
キーワード:水田土壌、グライ土壌、無機化、速度論的解析
山形県庄内地域のグライ土壌(25点)について、自然変温条件下で速度論的解析を行った結果をもとに、地力窒素無機化の特徴について検討した。得られた結果は以下のとおりです。
1)庄内地域のグライ土壌の地力窒素の無機化は負の項のある2項モデルに適合した。正の項の速度定数は、火山
灰が混入していない土壌では、0.01 1/d前後であり、負の項のそれは大部分の土壌で0.016〜0.026 1/dであっ
た。一方、活性化エネルギー、可分解性有機態窒素量は一定の傾向が見られなかった。
2)水稲の生育中期以降の地力窒素吸収量と、正の項で計算した地力窒素無機化量の間には、正の相関が認めら
れた(r-0.799***)。
3)正の項、すなわち全無機化部分が50%および90%分解するのは大部分の土壌で、それぞれ6月下旬〜7月上旬お
よび8月下旬である。また、庄内グライ土壌の地力窒素は、水稲生育初期に50%以上が無機化されることが明かと
なった。
4)ある期間に無機化される窒素の年次変動は、活性化エネルギーと正の相関があった。また、ある期間に無機化さ
れる窒素量と、可分解性窒素量との間にも正の相関が認められた。