水田土壌中での地力窒素無機化の速度論的解析 
第1報 沖積水田土壌の地力窒素の無機化モデルについて
    
安藤豊・藤井弘志・佐藤俊夫・荒垣憲一・中西政則・佐藤之信   
 
日本土壌肥料学雑誌 60-1, 1-7 (1989)  
 

キーワード:水田土壌、地力窒素、無機化、速度論的解析
 

沖積水田土壌の地力窒素の無機化過程を窒素無添加で自然変温条件下で速度論的に解析を行い、無機化モデルを検討した。得られた結果は以下のとおりである。
1)無機化過程は、負の項を持つ2項モデルによくあてはまった。負の項は、沖積土壌中に存在する易分解性炭素によって無機態窒素の有機化・脱窒作用が起きるために出現したものと見られた。また、有機化・脱窒は地力窒素の無機化に支配され、負の項は、水田の地力窒素の無機化の一つの指標と見られた。一方、正の項は、全窒素無機化量を示す特性と見られた。
2)火山灰土壌は、負の項を持つ2項モデルでは、負の項の(定数)が沖積水田土壌と比べて低い値であった。また、活性化エネルギーが高い傾向を示した。
3)三つの沖積土壌のうち本場土壌(細粒灰色低地土)の活性化エネルギーは、負の項および全無機化量(正の項)ともに、他の沖積土壌と比べて著しく低かった。これは、本場土壌が新規造成圃場であり、その土壌有機物が、風乾処理によっても変質しにくいことと関係しているものと見られた。
4)沖積水田土壌での水稲生育初期の地力窒素吸収量の80-90%は負の項から無機化した窒素に由来する。このことは、水稲生育初期の地力窒素吸収量の予測にあたっては、負の項の無機化特性値が使用できることを示す。

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