水稲の初期生育と気象・土壌条件

早坂 恵

【目的】遅延型冷害が問題となる地域において、水稲の初期生育を確保することは安定した収量を得るために重要となる。初期生育は土壌要因及び気象要因によって影響をうけ、圃場間で生育が異なる。このうち、移植後20日の茎数は土壌溶液中のアンモニア態窒素で40%説明できるという報告がある。他の60%は同一苗であれば気象条件に起因するものと推定される。一般にメッシュ気候図に用いられる気象データは広域で測定されたものであり、鶴岡市では1地点で測定されたデータを利用している。したがって、メッシュごとのデータと圃場間の気象条件が同一の値であるとは確定できない。そこで、本実験は、鶴岡市の水田圃場において、圃場ごとの気象条件の実態を把握し、気象条件・土壌条件と水稲生育の関係を明らかにすることを目的とした。

【材料・方法】供試品種:はえぬき 栽培方法:農家慣行 供試圃場:鶴岡市の圃場5地点(高坂・清水新田・水沢・下川・平田) 測定項目:草丈・茎数・植物体中窒素量・土壌中交換性アンモニア態窒素・土壌溶液中アンモニア態窒素 気象測定項目:気温・湿度・日射量・風速

【結果】@気象条件:気温・湿度・日射量の値は5地点でほぼ同じであった。風速は鶴岡市の大山街道を境に北側で強い傾向が認められた。A気象条件が異なる場合:北側で活着が悪くなった。この理由として北側の風が強いため、植え傷みによる損傷が考えられた。気象条件が同一の場合:水稲生育の圃場間差は土壌溶液中のアンモニア態窒素によって決定された。B圃場の気象データを蓄積し、水稲生育を定量的に示すことで、気象と土壌から水稲生育モデルを作ることが今後の課題となるだろう。
 

卒業論文一覧に戻る

栽培土壌ホームページへ戻る