水稲の出液速度と炭水化物の関係

伊藤 浩志

 水稲の登熟を向上させるためには、活力のある根を生育後半まで維持させることが重要である。この活力評価方法の1つに出液速度がある。出液とは茎葉部の切断面から得られる液で、能動的吸水を基盤としている。能動的吸水は光合成同化産物を利用して行われるため、光合成同化産物である全糖と出液速度には関係があると予想される。しかし、圃場栽培された水稲の出液速度と出液採取後の根の全糖含有率との間には明確な関係は認められなかった。この原因としては、圃場栽培では根の全量回収ができない点、また出液採取後の根を対象としている点が挙げられる。そこで本研究は水耕栽培した稲を用いて、出液採取前後の根の全糖含有量、また出液採取中に消費された全糖量(根及び茎部)と出液速度との関係について検討した。

【材料・方法】供試品種:はえぬき。栽培方法:1/5000aワグネルポットで水耕栽培。実験時期:出穂後34日。処理区:非遮光区、20%遮光1日区、20%遮光1日区、20%遮光3日区、40%遮光3日区。測定項目:出液速度=8〜10時(出液量が最大となる時間),16〜18時(出液量が最低となる時間)、全糖(根および10cmの茎)。

【結果】@出液速度と出液採取前の根の全糖含有量には明確な関係がなかった(図1)。A出液速度と出液採取中の根の全糖消費量には関係がなかった(図2)。B出液速度と出液採取中の根と10cmの茎をあわせた全糖消費量には関係がなかった(図3)。
これらの結果から今後の課題として以下の点が挙げられる。@処理区、実験回数を増やし出液速度と全糖の関係について再検討。A糖を分別し、出液速度との関係を検討。B植物が利用できる全糖と澱粉の両方の変化量を把握。



 

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