黒ボク土壌におけるケイ酸の吸着と供給

松田 沙知

 【目的】黒ボク土壌(以下、黒ボク)が広く分布する山形県中山間地で、水稲のケイ酸含有率が低く問題となっている。水稲のケイ酸含有率は土壌の供給力と深く関係し、この供給力は土壌からの溶出と土壌による吸着の差で示される。ケイ酸の吸着は、黒ボクに多量に含まれる活性アルミニウムが関係している。ケイ酸の吸着現象が供給力に及ぼす影響は、一般的に水田として利用される沖積土壌(以下、沖積)に比べ、黒ボクで大きいと考えられるが、明らかではない。そこで沖積を対照土壌として、黒ボクのケイ酸吸着現象が水稲ケイ酸含有率に与える影響を検討した。

  【材料と方法】供試土壌:黒ボク(アロフェン質、非アロフェン質)12点(リン酸吸収係数1500以上)、沖積,他8点(リン吸1500以下)。分析項目:≪水稲≫成熟期ケイ酸含有率。≪土壌≫リン酸吸収係数、ケイ酸の吸着強度、活性アルミニウム含有量、リン酸緩衝液法(PB法)による抽出ケイ酸濃度。なおPB法は、リン酸とケイ酸の吸着が競合関係にあることを利用し、吸着態ケイ酸をリン酸緩衝液により交換抽出する方法。

  【結果】@PB法抽出ケイ酸濃度と水稲ケイ酸含有率には有意な正の相関があった。しかしPB法の値に対する水稲ケイ酸含有率は、黒ボクよりも沖積で高くなった。A黒ボクは沖積に比べ、ケイ酸の吸着強度およびリン吸が高かったことから、黒ボクの吸着態ケイ酸量が多いと考えられた。@,Aから、PB法は吸着態ケイ酸に加え、吸着態以外のケイ酸を抽出し、後者のケイ酸が優先的に水稲に利用されると考えられた。BそこでPB法が同値の黒ボクと沖積について、30分間水抽出のケイ酸濃度を比較すると、黒ボクのほうが低かった。以上のことから、PB法によって土壌ケイ酸供給力を推定する場合、ケイ酸の吸着強度およびリン吸値から土壌を分類する必要があることが考えられた。




 

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