ケイ酸施用が水稲の体内水分維持に与える影響

佐藤 文華

【目的】イネをはじめ、植物にとって水はさまざまな代謝過程に影響を与える。例えば、光合成に密接に関与し、乾物生産を通して収量に影響する。そのため、体内水分維持が重要となる。体内水分は、葉からの蒸散と根からの吸水によって変動する。本研究室の報告から、ケイ酸施用した水稲は、気孔を閉じることにより蒸散を抑制し、体内水分を維持するという傾向が認められた。しかし、体内水分は根からの吸水もふまえて考える必要がある。そこで本研究では、ケイ酸施用が水稲の体内水分変動に与える影響について、蒸散と吸水の関係から検討した。

【材料および方法】供試品種:はえぬき、供試土壌:山形大学付属農場実験田、栽培方法:1gポットに土耕栽培、処理区:ケイ酸無施用(0g/pot)、ケイ酸施用(0.8g/pot)、環境条件:気温30-32℃、湿度50-70%、光:1500μmolm-2s-1、測定時期:出穂3日後、測定項目:単位葉面積当たりの含水量、気孔伝導度(携帯用光合成蒸散測定装置)、蒸散速度および吸水速度、ケイ酸含有率。

【結果】@単位葉面積当たりの含水量、A気孔伝導度:ケイ酸無施用<ケイ酸施用 B蒸散速度、吸水速度:両者に有意な差は見られなかった。 C蒸散速度と吸水速度の差:両処理区ともに、蒸散速度>吸水速度となった。しかし、その差は無施用で大きかった。一方ケイ酸施用はその差が小さいため、蒸散速度=吸水速度により近い状態であった。これにより、ケイ酸施用で体内水分の変動が少なくなった。
【結論】ケイ酸施用で体内水分の変動が少なかったのは、蒸散速度の抑制や高い吸水速度ではなく、蒸散速度にみあった吸水速度に起因するものと推察された。


 

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