土壌中におけるNH4-Nの動態

袖本 泰代

【目的】窒素は作物の生育に必要不可欠な栄養素である。一般的に、窒素の施用にはアンモニア態窒素の硫安が用いられている。土壌中において、非生物的要因に限ってアンモニア態窒素の土壌中での挙動を考えた場合、土壌中の鉱物や腐植による固定、土壌溶液内での存在、土壌に吸着しているものの三つの存在状態が考えられる。ところで、作物と施肥窒素との関係を把握するさいには、植物体の施肥窒素利用率が重要となる。仮に施肥直後にアンモニア揮散や鉱物固定といった物理・化学的な反応が起きていたならば、それらのアンモニアは植物体が利用不可能となる。そのため、施肥窒素が土壌中においてどのような状態で存在するかを調べることは重要である。そこで、本研究では、土壌に窒素を添加しその回収率を求めることで、添加直後の土壌中における窒素の存在状態を予測することを目的とした。

【材料および方法】供試土壌:水田土壌4点(長野、熊本、八郎潟、高坂)。添加窒素:窒素成分(14Nないし15N)を6.0(mg/100gDS)含む硫安溶液20ml。実験方法:風乾細土10gに対し硫安20mlを添加し、30分程度放置後、2MKCLで抽出を行った。窒素回収率の求め方:差し引き法(14N)、直接法(15N)。

【結果】15Nの回収率は100%以下となったのに対し、14Nの回収率は100%を上回る値となった。このことから、添加したもののうち少量のアンモニアが土壌に固定されるが、同時にそれ以上に土壌に固定されていたアンモニアの放出が起き、添加窒素が土壌に固定されても植物体への影響はないと考えられる。さらに、14Nの回収率と土壌に固定されていた窒素量とを比較したところ、両者の関係を明確に表すことはできなかった



 

卒業論文一覧に戻る

栽培土壌ホームページへ戻る