1,2年生の皆様へ

1.グローバル人材の育成
 「グローバル人材の育成」は,最近のブームの一種で,山形大学だけではなく,日本の大学がこぞってグローバル人材の育成を目標に掲げています.しかし,「グローバル人材とはどういう人材か?」と問われると,必ずしも明確な答えが返ってこないのも事実です.それではまるで,「どういう人のことかは判らないけれど,とにかく育てる」と言っているようで,多少無責任なようにも聞こえます.また,グローバルというと,どうしても「英語が話せる」,「英語圏に留学する」といった,こちらも短絡的な発想に偏りがちではないでしょうか?むしろ,日本にいても大学生なら日常的な英会話は「できて当然」で,皆さんには是非+αを勉強して頂きたいと思います.「7.英語と国際共同研究」にも書いてありますが,語学力もさることながら,異文化に対する理解,先進国だけでなく発展途上国でも研究ができるタフネスさ,国際学会でも堂々と英語で議論が出来る度胸など,多くの日本人に欠けていて,しかもこれから皆さんの将来にとって非常に重要になって来るであろう資質を養うことができるのは,ある意味大学時代の過ごし方にかかっていると思います.
 当研究室では,そういう意味でのグローバル人材の養成を目指して教育・研究を行っています.多くの留学生と触れ合い,議論し,共同で実験することを通して,将来は自ら世界に打って出ることの出来る人材に育って行ってくれればなによりです.また,英語以外にも是非外国語を習得して下さい.当研究室ではアジア諸国を始めとして多くの国々から留学生を受け入れています.それらの留学生の母国語を覚えることも重要なスキルです.今後,アジアやアフリカとの交流がますます盛んになり,日本企業も生き残りのために積極的に海外展開をして行くであろうことを考えると,こうした国々の言葉を習得しておくことは,就職にも有利になると思います.

2. 研究テーマ

 当研究室のURLからアクセスし,各研究紹介を参照して下さい.研究内容につきましては,その年度における研究室の予算,外部からの委託研究の状況等によって変わってきます.また,学会誌へ投稿する論文などは,主に大学院生が担当するテーマであることが多く,研究室に配属されたからと言って,必ず研究紹介に掲載されているような研究テーマについて研究できるとは限りません.また,必ずしも自分の自由に研究テーマを選べるとも限りません.研究には長い年月と経験,費用がかかります.そのため,優れた研究テーマであっても財政的な理由で直ぐには始められないような研究テーマもありますし,少なくとも数年間に渡って一つの研究テーマについて研究を続けて行く必要がある関係上,「先輩のやった研究テーマを引き継いで」やらざるを得ないという状況も生まれてきます.

3.ミーティング
 当研究室では毎朝08:30〜ミーティングを行っています.原則として学生全員に出席して頂いています.これは各人が講義や実験,就職活動など,また,教員の側は出張や会議などがあるため,常に教員とディスカッションする時間を自由に取ることが出来ないことによる代替措置です.ですから,朝全員が研究室に集まって,その日一日の実験計画や実験の様子を話し合うことによって,足りない物や今やらなければいけないことを確認し,適宜対応できるようにするために行っています.

4.学生実験と共同作業
 当研究室は「安全農産物生産学コース」の中の一研究室です.研究室への配属(仮配属)は3年前期からとなります.安全農産物生産学コースでは,2年前期でコースを選択し,3年前期で研究室(分野)を選択することになっています.3年前期のフィールド・サイエンス実験実習IIでは,前期の最後の日を使って行う発表会に向けて研究室3年生全員が一つの研究テーマに沿って研究を行いますが,研究内容には必ず「野菜の栽培」が入ります.今までの例では,
 1)メロンの養液栽培
 2)チリイチゴの栽培
 3)ナスの施肥試験
など,主として果菜類の栽培実験を行っています.安全農産物生産学コースの皆さんは2年生の実験実習が附属農場であり,その時にある程度の栽培を学習する機会がありますが,手間のかかるメロンやイチゴの栽培,養液栽培などを学ぶ機会はそれほど多くありません.そのため,当研究室では,2年次の実験実習を補う目的で,果菜類の栽培を担当して貰っています.
 また,当研究室では熱帯果実の生理障害や貯蔵障害なども研究テーマに入っているため,これらを担当した場合,4年生や大学院では必ずしも野菜を栽培しない場合があります.こうしたことは,研究テーマの性質上ある程度やむを得ないことですが,当研究室はあくまでも「野菜園芸学研究室」ですので,やはり基本的な知識としては,野菜の栽培方法は知っておいて欲しいと思うからです.
 また,当研究室では毎週1回,の午後の時間を「共同作業の日」としています.当研究室ではガラス温室やビニルハウス,圃場などを管理しているため,例えば除草作業や野菜の定植,整枝,収穫作業など,一人では到底できない仕事が多々あります.こういう仕事は全員が共同して行わなければどうにもならないため,週1回の共同作業をお願いしています.

 
イチゴの栽培実験

茄子の栽培実験
 
メロンの栽培実験
 
温室の除雪作業
 
誕生日会のケーキ
 
お花見
 
BBQ大会
 
農作業
 
遠 足

5.研究室セミナー
 研究室セミナーは,主に英語の論文を読んでその内容を発表する場で,殆どの研究室で行われています.現在では翻訳ソフトのような物が進化したために,どんな英文でもたちどころに日本語に翻訳できますが,日本語に翻訳できたからと言って,論文の内容が理解できるとは限りません.科学論文の内容を理解するためには,英語の語学力も勿論ですが,中学や高校で学習する生物,化学,数学といった基礎的な知識,大学1〜3年で学習する専門科目なども非常に重要になってきます.当研究室では「論文の内容を適確に把握し,それを自分の言葉で説明できるようになること」を目指して,研究室セミナーを行っています.

6.研究室イベント
 当研究室では,実験実習の他にも様々なイベントを開催しています.自分達で栽培した野菜を使ったBBQパーティーなどは,野菜園芸学研究室ならではのイベントです.また,学生が研究圃場を使って自主的に色々な野菜を栽培することも推奨しています.教員が指導できるのは数種類の野菜が限度ですので,それ以外の野菜については是非自分で栽培方法を勉強して,トライしてみて下さい.


7.英語と国際共同研究
 今の大学生には,会話を含めた高い英語の語学力が求められています.そのため当研究室では,英語の語学力向上に力を注いでいます.具体的にはここ数年は継続的に留学生を受入れ,積極的に英語を使用する機会を設けています.また,どんなに英語力があっても,異文化に対する理解や英語以外の基礎学力がなければ,せっかくの英語が活かされません.例えば,ネイティブと同じくらい英語が上手に話せる人を連れてきても,私達が行っている研究を英語に翻訳して伝えることは出来ません.私達が行っている研究をきちんと英語で伝えるためには,先ず研究内容が理解できるだけの園芸学,生物学,生化学などの基礎知識を持たなければいけないからです.ですから,先ず何よりも専門の基礎学力が大事です.ただし,研究成果を発信する手段は,現状では残念ながら英語しかありませんので,英語は是非勉強し続けて下さい.ネイティブのように話す必要はなく,文法的に間違っていてもそれ程問題になることはありません.黙っているのではなく,積極的にコミュニケーションを取ることによって,外国人とディスカッションすることに慣れることが一番大切です.当研究室では,短期,長期の学生も含め,以下の国々から留学生を受け入れてきました.

・米 国(ニューヨーク州立大学コブルスキル校)
・チ リ(タルカ大学農学部)
・韓 国(慶南科学技術大学校)
・中 国(延辺大学農学部)
・インドネシア(ガジャマダ大学)
・ベトナム(ハノイ農業大学)
・バングラデシュ(シエレ・バングラ農業大学)
・タ イ(キングモンクット工科大学トンブリ校,カセサート大学理学部)

 また,当研究室では,留学生を受け入れるだけでなく,受け入れた学生が卒業して帰国した後も連絡を取り続け,将来の国際共同研究に結び付くよう努力しています.留学生の多くは発展途上国から来ていますので,国際共同研究も主なパートナーはアジアや南米の発展途上国の大学や研究機関です.

 こうした地域の大学は,日本の大学から見ると設備面などで遅れている場合もありますが,将来的に見ると,どこも18歳人口が急激に伸びており,大学の役割だけでなく,日本企業の進出先としても非常に重要視されている国々です.ですから,学生時代に途上国からの留学生と個人的に知り合い,また,国際共同研究などを通して現地の大学を訪問する機会を持つことは,皆さんが就職した後も,大いに役立つものと思います.
 アジア・南米との国際共同研究に興味のある方は,
国際交流(International Collaboration)を参照して下さい.

8.研究室
・教員
   西澤 隆(教授)
・秘書
   佐藤百合香
・博士課程
   
・修士課程
   3名(バングラデシュ,ルワンダ,日本),日本)
・4年生
   3名
・3年生
   1名
・短期留学生(1年間)
   1名【インドネシア(ガジャマダ大学)】
・その他(海外共同研究者)
   T.S. Roy, A.M.H. Solaiman(シエレ・バングラ農業大学・バングラデシュ)
   A. Karim(ダッカ大学・バングラデシュ)
   W. Kumpoun(チェンマイ大学・タイ)
   T. Puthmee(ラジャマンガラ工科大学タワンオク校・タイ)
   J. Retamales(タルカ大学・チリ)

9.就職先
 就職については,個人の努力による所が大きいです.○○○研究室に配属されたから必ず○○○会社の○○○研究所に入れるというような例は先ずないと考えた方が良いと思います.農学部の中でも人気の高い地方公務員上級職や高校教員を目指す人は,普段から相当猛勉強を行っています.「日本の大学生は勉強しない」というようなことも良く言われますが,本気でこれらを目指している人にとっては全く当てはまらない指摘です.
 就職先は個人の選択ですので,教員サイドからはなかなか強くは言いにくいですが,せっかく農学部で学んだ以上,出来れば農業・食品・環境に関連するような分野に行って欲しいという気持ちはあります.また,勿論就農や農業法人に就職することも,これからの日本の農業の将来を考えると,非常に重要な就職先の一つであると思います.

進 路(過去3年)
 進学(山大院4名),大学教員(留学生2名),吉林省農業科学院(留学生),県職員(山形2名,福島,埼玉),高校教員(千葉,滋賀),JA,中央農業共済組合,幸楽苑,芳源マッシュルーム,山形日紅など