光触媒を用いた園芸作物の貯蔵性に関する研究
Effects of Photocatalytic Oxidation on the Quality Preservation of Horticultural Crops


 光触媒技術は様々な分野で取り上げられていますが,私達は光触媒を使って園芸産物の貯蔵庫内の環境を制御することで,日持ち性や品質を長く保つことが出来ないか研究しています.具体的には,トマトのように貯蔵中にエチレンが多く発生する果実では,貯蔵庫内のエチレン濃度を下げることにより,一緒に入れた若いトマト果実の成熟を抑制したり,イチゴのように日持ち性の悪い果実では,灰色カビ病の発生を抑制できるなど,一定の効果が認められています.
また,山形県鶴岡市で育成されたメロン‘ライフ’は,我が国で初めての民間育種によって昭和39年に品種登録されたメロンで,爽やかな甘味が評判を呼んで,当時は大変期待が持たれましたが,収穫後の日持ち性が悪く,次第に‘アンデス’などに代わってしまいました.私達はこの‘ライフ’メロンの日持ち性を上げるため,光触媒技術を使った貯蔵庫内で貯蔵実験を行い,こちらも一定の効果があることを確認しています.
 今後は,貯蔵庫の改良や光触媒以外の技術も合わせて活用することにより,園芸農産物の貯蔵性向上に取り組んで行きたいと考えています.

光触媒を用いた果物の貯蔵試験結果.光触媒には貯蔵庫内に放出されたエチレンを分解する効果があるが,果物からのエチレンの生成自体を抑制する効果はないので,クライマクテリック果実のように大量のエチレンを発生する果物を大量に貯蔵した場合には,貯蔵庫内のエチレン濃度を下げるのは困難となる.また,光触媒を用いて貯蔵中のエチレンの蓄積をある程度抑制できても,貯蔵後には再びエチレン生成が活発になるため,実用化には貯蔵後のエチレン生成も抑制できるような技術開発が必要となる.
光触媒に関する主な研究業績
  1. Nishizawa, T., T. Aikawa, M. Takahashi, H. Murayama and U. Matsushima. 2006. Storage of horticultural products in closed rooms with TiO2 photocatalyst: Changes in room atmosphere and quality of fruits and cut flowers. Acta Horticulturae 712: 261-268.
  2. Nishizawa T., K. Okafuji and H. Murayama. 2009. Storability and development of physiological disorder of netted melon 'Life' fruit as influenced by storage conditions. Acta Horticulturae 837: 147-154.