食用ぎくとは
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食用ぎくとは

 食卓に登場するキクには大きく分けて、刺身のつまにする「つまぎく」と、おひたしなどに調理して食べる「食用ぎく」(食用菊)があります。

 「つまぎく」は黄色の小輪のキクの花で、苦味が強く通常食べません。それに対して「食用ぎく」は、花びらそのものをまとまった量食べるもので、料理ぎくとも呼ばれます。  統計上は「つまぎく」も「食用ぎく」として扱われていますが、ここでは「つまぎく」と区別して、まとまった量の花びらを食べるキクに限定して「食用ぎく」と呼ぶことにします。

 キクは観賞用として日本人に最もよく親しまれている花ですが、食用ぎくは、分類学的には観賞用のキクと同じspecies)に分類されるものです。ですから、「ショクヨウギク」とカタカナ表記される植物は存在せず、食用ぎくの正しい和名は「キク」ということになります。

 現在栽培されている食用ぎくには、もともと観賞用に栽培されていたものを食べてみたらおいしかったので食用にも栽培されるようになったものが多くあります。観賞用のキクとの区別点は、ただひとつ、おいしいかおいしくないかということです。



図1.食用菊の収穫量

食用ぎくの生産

 食用ぎくがよく食べられているのは、東北地方と新潟県で、収穫量もこれらの地域で多く収穫されています。なかでも山形県の生産が最も多く、ついで青森県、新潟県の順になっています。ちなみに左図は2008年の食用ぎくの収穫量のグラフですが、1位の愛知県は「つまぎく」です。これを見ると「食用ぎく」の生産量は「つまぎく」のそれに匹敵することがわかります。

 食用ぎくの最盛期は秋ですが、シェードや施設栽培による促成や抑制栽培も行われています。

黄ぎくの施設栽培(山形)

もってのほか(山形)


阿房宮(青森)


湯沢菊(秋田)


坂本菊(滋賀)

いろいろな食用ぎく

 地方によってそれぞれ栽培されている食用ぎくに特徴があります。よく知られた食用ぎくを紹介しましょう。

 阿房宮(あぼうきゅう)は青森県と岩手県で栽培される明るい黄色の平弁のキクで、由来にはいくつかの説がありますが、江戸時代にもともと観賞用に栽培されていたものといわれています。おもに干し菊(菊海苔)として加工されます。

 湯沢菊(ゆざわぎく)は秋田県湯沢地方でで栽培される橙色を帯びる黄色・平弁でのキクです。

 もってのほかは山形県で、かきのもとは新潟県で栽培されている紫色・管弁のキクで、地方により、延命楽(山形県庄内地方)、おもいのほか(新潟県長岡地方)かしろ(山形県置賜地方)などの名称で呼ばれるものがあり、いずれもしゃきしゃきした歯ざわりが特徴です。

 花の形や開花期は「もってのほか」に似ているが花が黄色のものに黄もってがあります。いくつかの系統がありますが、もってのほかと同様しゃきしゃき感があります。

 金唐松(きんからまつ)はその名の通り黄金色の極細弁のキクで、収量は少ないが食味がよいのが特徴です。

 紫唐松(むらさきからまつ)は紫色・管弁のキクで、開花期が遅く気温の低下する時期に咲くので花色が濃く鮮やかにでるのが特徴です。

 変わりものとしては、滋賀県で栽培されている坂本菊があります。食用ぎくの主産地である東北・新潟から隔てて栽培されているという地理的な特異性もさることながら、花びらの形は先が切れ込んだ筒型をしており、普通のキクとはかなり変わった形をしています。

 黄菊は食用ぎくの産地に広く栽培されていますが、紫色の食用ぎくが栽培されているのは、山形県と新潟県だけです。




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かきのもと(新潟)


金唐松(新潟)


紫唐松(新潟)