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森茂太教授「最終講義」のご案内

 

森 茂太教授(森林生態学)が、2021年度をもちまして本学を退職されることになりました。下記のとおり最終講義を行いますのでご案内いたします。

                     記

日 時: 2022年3月11日(金)13:00~14:30(内、講演は1時間程度を予定)

場 所: 鶴岡キャンパス3号館3階 301講義室

題 目:「木も草も人も似た生き方をしている ― 個体呼吸スケーリングに見る統一性 ― 」

 一つの例外もなくあらゆる生物は、エネルギー生成(=呼吸)し、これを効率的かつ柔軟に配分し、多様な環境で生きている。個体呼吸に関するMax Kleiber 法則(Kleiber 1932)やWBEモデル(West et al. 1997)は多様な大小生物を包括する個体呼吸スケーリングを提案し、世界的に重要課題となっている。しかし、多様な大小生物を網羅して個体呼吸の実測は難しく賛否の議論が続いている。
 そこで、木本(シベリア~熱帯の発芽種子~34m巨木、活発~枯死寸前含む)、草本(イネ、トウモロコシ等も含む)、タケ類(地上部)を生態系パターンとスケールを網羅して個体呼吸(約1500個体以上)を正確に実測し(Mori et al.2010, Kurosawa & Mori et al.2021, Wang & Mori et al. 2021)、魚類個体呼吸(Yagi et al. 2010, 2014)と比較した(水産学部との共同研究)。その結果、両者に共通した統一的な「個体呼吸と生重量のスケーリング関係」をモデル化できた。  
 個体呼吸の制御は、「限定スケールや器官レベル」では環境・系統・遺伝子が主要因である。しかし、あらゆる生物は飢餓で死なないように呼吸調整し、多様な呼吸基質を貯蔵し、ストレスで「往生際」に追い込まれても環境改善の兆しで容易に「息を吹き返す」。この現象は多くの生物個体に普通に見られ、近年はレジリエンスと定義される。その結果、環境・系統・遺伝子の違いに生じる個体呼吸差は、この「一生に何度も繰り返す個体呼吸のゆらぎ」の中に埋没した。結局、生態系のパターンとスケールを網羅すると、個体呼吸は主に個体サイズにのみに依存して上に凸の非線形傾向(ロジスチック型)が顕著になった。生物は、変動環境下でもゆらぎを内包する非線形エネルギー生成ベースライン(呼吸スケーリング)を軸に柔軟に成長を持続できるのだろう。個体呼吸のゆらぎは変動環境を乗り越える装置ではないかと思われる。
※新型コロナの流行状況を鑑み、講演会場への入場は本学教職員および学生に限らせていただきます。聴講をご希望の方は、下記までお問い合わせください。

 

【問い合わせ先】
山形大学農学部教育研究支援室(松浦)
TEL:0235-28-2855

 

■掲載日:2022.3.2