研究紹介
#13 メタボローム育種を利用した疾患予防
多くの植物の地上部に含まれるシュウ酸は、ヒトや家畜においてカルシウムや鉄、亜鉛などのミネラル不足や腎結石を引き起こす原因物質です。近年、ミネラル不足や腎結石の患者が増加しており、ホウレンソウなど作物に含まれるシュウ酸含有量の低減は喫緊の重要課題となっています。しかしながら、植物におけるシュウ酸合成経路には不明点が多く、なぜ、どのようにシュウ酸が蓄積するのか、未だに良く分かっていません。
そこで、私は、質量分析装置を用いたメタボローム解析(代謝物の一斉解析)を主軸として、イネやエゾノギシギシなどの葉を材料にシュウ酸合成経路の解明を目指しています。また、シュウ酸を低減させた作物を育成することにより、味や機能性成分に関わるような他の代謝物の含有量を制御し、作物の品質向上やブランディング、ひいてはヒトや家畜の疾患予防に役立てたいと考えています。

■2025.05.02掲載
研究一覧
- #01「DNA解析で紅花や青苧の起源を探る」 笹沼 恒男(植物遺伝・育種学)
- #02 「メタボロミクスで生命現象を理解する」 及川 彰(農産物生理化学)
- #03「風土に調和した在来作物の古くて、新しい"つくりかた"を次世代へ」渡辺 理絵(環境地理学)
- #04「鳴声を利用してシカとサルを自動で検知する低コスト技術を開発 」江成 広斗(森林保全管理学)
- #05 「 農業簿記・会計を用いた農業者のマネジメント能力の向上 」家串 哲生(農業会計学)
- #06 「 無限の可能性―微生物から天然物の探索― 」 塩野 義人(発酵制御学)
- #07 「 ロボットやドローンで作物の病害を検出索― 」 小林 隆 (植物病理学)
- #08 「 無人機による山形県の森林の樹種分類やバイオマスと健全性の情報取得 」 ロペス・ラリー (森林学)
- #09 「 人間と機械が協調するスマート農業 」 片平 光彦 (農業機械学)
- #10 「 山形で進める野生哺乳類の生態研究 」 斎藤 昌幸 (景観生態学・野生動物学)
- #11 「 体の抗酸化能を高める機能性成分の探索 」 小林 翔 (食品栄養科学)
- #12 「 ウイロイドの防除と利用に関する研究 」 鍋島 朋之 (野菜園芸学)