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研究紹介

#13 メタボローム育種を利用した疾患予防

准教授 宮城 敦子(農産物生理化学)

 多くの植物の地上部に含まれるシュウ酸は、ヒトや家畜においてカルシウムや鉄、亜鉛などのミネラル不足や腎結石を引き起こす原因物質です。近年、ミネラル不足や腎結石の患者が増加しており、ホウレンソウなど作物に含まれるシュウ酸含有量の低減は喫緊の重要課題となっています。しかしながら、植物におけるシュウ酸合成経路には不明点が多く、なぜ、どのようにシュウ酸が蓄積するのか、未だに良く分かっていません。
 そこで、私は、質量分析装置を用いたメタボローム解析(代謝物の一斉解析)を主軸として、イネやエゾノギシギシなどの葉を材料にシュウ酸合成経路の解明を目指しています。また、シュウ酸を低減させた作物を育成することにより、味や機能性成分に関わるような他の代謝物の含有量を制御し、作物の品質向上やブランディング、ひいてはヒトや家畜の疾患予防に役立てたいと考えています。

図1:水田にて育成中のイネ。シュウ酸はコメの部分にはほとんど含まれていないが、品種によっては葉に多く蓄積する。
図2:タデ科の高シュウ酸植物エゾノギシギシ。繁殖力旺盛な侵略的外来種である。
図3:キャピラリー電気泳動-三連四重極型質量分析装置(CE-QQQ-MS)を用いた代謝物データの解析の様子。

■2025.05.02掲載


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